※沖田視点




それを遠巻きに見ていたが本当に面白かった。

女というものは、そのままでも充分魅力的なものだけれど
着る物を変え、飾り立てればさらに魅力が引き出るものなのだと、再確認した。
その証拠に、近藤さんや土方のヤローも固まっていた。
当のは、その反応が違うものからくるものだと思っていたようだったが。

酔うと本音が出るとはよく言ったもので。
顔を真っ赤にしたが、何をしでかすか楽しみだったが、まさかあそこまでやるとは思ってもいなかった。
普段我慢しているものが一気に噴き出した感じだと思う。

あいつはそうとう酔っていて分かっていなかったが、近藤さんの反応も意外なものだった。
女に慣れていないとは言え、相手は慣れ親しんだだ。
まあ着飾ったあいつを見た時の反応を考えれば、分からなくもないが。

そもそも、あいつがあんな事をした原因になったのも、近藤さんが一切あいつに構わなかったからで。
それも、綺麗になったにどんな顔をしていいか分からなかったんだろう。
に女を見てしまい、恥ずかしくなったに違いない。
あいつに顔を無理矢理向かされた時、頬を染めたのを見てお前は乙女か、と言いたくなった。

その後が一番驚きだった。
任務中だと言うのに、何より意中の女がいるという所で、近藤さんはを抱き締めた。
それはそれはとても優しい抱擁で、まるで恋人同士みたいだと思ったくらいだ。
まあ、近藤さん本人もどうしてそんな事をしたのか、分かってなかったみたいだが。
あやすように声をかけ、背中を擦っていると、は泣き出した。
泣いて泣いて、酔っているから回らない呂律のせいで、何を言っているかほとんど分からなかった。
ただ、近藤さんの腕に安心したのか嬉しかったのか、立ったまま寝始めた。
その反応に近藤さんは苦笑いを零すばかり。


「トシ、後を頼んでもいいか?」

「あ、ああ……」


全員がぽかんとしている中、お妙だけが妙に面白そうな顔をしていた。
近藤さんはを横抱きにすると、俺に声をかけてきた。


「総悟、運転頼めるか?」

「へい、構いませんぜ」

「悪いな」


俺と一緒に店を出た近藤さんの顔は、もう苦笑いなんかじゃなかった。



俺は運転席に、近藤さんとは後部座席に座った。
自分の膝にの頭を乗せて、いわゆる膝枕をしてやっていた。


「起きたら可哀相だからな、ゆっくり運転してくれ」

「へい」


バックミラーで確認すると、とんでもなく優しい顔をしての頭を撫でている近藤さんがいた。
優しい表情なんて、よく見たものだが、その時の表情はまた違うものだった。
そう、まるで、愛おしいものを見る目だと思った。


「……も、女なんだよなァ」

「そうですぜ、今頃気がついたんですかィ?」

「いや……なんというか……」


困ったように笑って、頭を掻く近藤さん。
窓の外では、ネオンが後ろへと流れていく。

本人ですら気がついていなかったが、近藤さんは最近、あの女の所に行く回数がめっきり減った。
その代り、部屋でと書類をやる事が増えたと思う。
土方さんが見張りと称してをつけるようになって、書類がはかどると言っていた。

結局、気がついていないのは、本人同士なのかもしれない。
も自分の気持ちを押し殺すのに必死で、近藤さんの些細な変化に気がつけないだろうし
もとより鈍感な近藤さんは、小さく光り出した気持ちにまだまだ自覚できないだろうし
俺がお膳立てしてやらなきゃいけないのかもしれない。
面倒で厄介な奴らだ。









もどかしい










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