その視線の先には誰がいるかなんて、分かりきっている事なのに、それでも辿ってしまう。
辿って、そして絶望する。
その先が私に向いている事が、ないのだから。

視界の端に映るだけでいいなんて、嘘。
本当はその視界だけじゃなくて、全てにおいて私を映して欲しい。

私の視線の先は、いつだってあなただ。
くるくると変わる表情は見ていて飽きない。
こっちを見て、そう念じてみてもあなたはこちらを見向きもしないのだけど。
視線だけで気持ちが伝わるのなら、きっと近藤さんはもう私の気持ちを知っているだろう。
そんな素振り、一度もないけれど。


「お前も飽きねェな」

「沖田隊長」

「他の女見つめてるの見て、楽しいかィ?」


意地悪な笑顔、私は苦笑いを返す。


「近藤さん見つけるのは簡単でさァ。の視線を辿りゃ一発だ」

「そんな事ないです。いつもいる訳じゃあ……」

「そんくらい見てるって事だろ」


隊長に向けていた視線を、前方にいる近藤さんに戻す。
そんなに私は彼ばかりを見ているだろうか。
これだと、いつ土方さんや他の人に気づかれる事か。

近藤さんの柔らかい視線の先には、弟さんと談笑するお妙がいる。
お妙はやっぱり今日も綺麗で、近藤さんの目はどこまでも優しい。
心臓がズキズキと痛む。それでも見てしまうのは、本当に滑稽だと自分でも思う。

視界が、じわりじわりと歪んでいくのに耐えられなくて、俯く。
隊長の靴が、目に入る。


少しでいいの、二番目でも、それ以下でも。
少しでいいから私のことを、女として見て欲しい。
意識して、目で追って、いつだって心のどこかに置いておいて欲しい。
その視線の先を、奪ってしまいたい。


ぽんぽん、と頭を軽く撫でられる。
その手が誰のものかなんて、確認しなくても分かる。
優しさが沁みて、ついに涙が地面へと落ちていった。


「……辛いです」

「おう」

「でも……好きなんです」

「知ってる」

「どうやったら、諦められますかね?」

「……諦める必要は、ねェんじゃねェか?」


その言葉の裏には、諦められる程簡単な気持ちじゃないんだろ、という意味が隠れているように感じた。
そうなんだ。いとも容易く止められるような気持ちなら、こんなに辛くなんてならない。
膨れ上がって、私の体を内側から爆発させそうな程なのだ。
辛ければ辛い程、あの人を愛おしく想う。


望んでやまない、近藤さんの視線の先が、その時私に向いていた事を知っているのは、沖田隊長だけだった。











視線の











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