それは町中でも、屯所でも、どこにいてもそうだ。
人ごみの中を、必死に目を凝らして探してしまう。あの人を。
似た人を見つけてはどきりとして、人違いだと分かるとがっかりしてしまう。
その分思わぬ所で遭遇すると、胸の高鳴りが抑えられない程だ。
我ながら、重傷だと思う。



同じ隊の仲間と見廻りをしている時、ふと人ごみに目を向けた。
もう癖になってしまっていて、ついつい見廻りの最中だというのに、近藤さんを探してしまう。
人より頭一つ分背が高くて、つんつん頭。隊服を着ていて帯刀しているから分かりやすい。
そうじゃない非番の日、着物の時でも私は彼をすぐに見つけてしまう。


「あ」

「どうした? 

「……いえ、なんでも」


近藤さんの後ろ姿を見つけて、思わず声を出してしまった。近藤さんは振り返って、それから私達を見つけると、笑顔でこちらにやって来た。


「お! に田中じゃないか!」

「お疲れ様です」

「お疲れ様です局長」

「おう、お疲れさん」


にこにこと他愛もない話をする近藤さんに、私達は相槌をうっていた。
不意に、近藤さんがじっと私を見つめる。
それから、とんでもない発言をした。


の視線は、すごく分かりやすいな」

「え?」

「なんか妙に視線を感じるなーって思って振り返ると、大抵お前が笑ってくれてるんだよ」


なんか、安心する。そう言ってまた笑うから、泣きそうになってしまう。
私の気持ちが一方通行だから、届いていないと思っていた。
でもこの人は、気持ちにこそ気がついていないけれど、確かに私の気持ちを受け取ってくれている。
それだけなのに、なんでこんなにも嬉しいんだろう。


「……それだけ、近藤さんのこと、尊敬してるんですよ」

「お、照れるな」


まっすぐ見つめて、本当の気持ちは言葉の裏に隠して、そう言った。
届いて欲しい、気づいて欲しい。でも、まだこの関係を壊したくない。
少し頬を桃色に染めて、後頭部を掻く近藤さん。


「さて、そろそろ見廻りに戻るか」

「はい。行くか、

「うん」


近藤さんに別れの言葉を告げて、私達は歩き出した。
数メートル進むと、背中に視線を感じた。
柔らかくて優しくて、羽毛のような心地のいい視線だ。
なんだろうと思って振り返る。

視線の先を辿る。そこにいたのは近藤さんで。
見た事もないくらい、優しい笑顔を浮かべて私を見ていた。
目が合うと、手を肩まで上げて振る。

湧き上がるこの感情は、一体なんて名前なんだろうか。
嬉し過ぎて、今にも死んでしまいそうなくらいだ。
浮かび上がった笑顔はそのままで、私も手を振り返した。

去っていく近藤さんの背中を、声がかけられるまでずっと眺め続けていた。

きっと、また屯所に戻れば、明日になればまた、私はあなたを探すんだろう。
その姿を見つけるまで、ずっと。










気がつけば君をさがしてる










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