沖田さんは、私をじっと見て、もう一度「俺の隊に入ればいいんでさァ」と言う。


「一番厳しいが、やり甲斐がありやすぜ」

「そうなんですか?」

「それに、あんたがいれば少しは面白くなりそうでさァ」


にんまりと嬉しそうに笑う沖田さん。土方さんは、新しい煙草に火を着けていて、特に何を言うでもなかった。
ふと、近藤さんが口を開く。


「確かに一番隊は常に前線に出ているが……まあ総悟が一緒なら大丈夫だろう」

「じゃあは俺の隊で構いませんかィ?」

「ああ」

「そうと決まれば、銃の腕前、試させてもらいまさァ」


右手を取られて、会議室から連れ出される。
私と沖田さんの後ろに、ゾロゾロと近藤さんや土方さん、他の隊長達も出てきた。
キシキシと軋む床を歩き、着いた先は庭。沖田さんから、紐を渡される。


「そのまんまで撃つんじゃ、袖が邪魔だろ。これで結びな」

「あ、ありがとうございます」


紐で袖が邪魔にならないよう、ぐるりと結ぶ。
いつの間にか来ていた山崎さんが、私の銃を持ってきてくれていた。
「弾はもう入っているよ」と渡されたそれは、確かにその分の重みを感じられる。

銃を手にしたその瞬間、何かのスイッチが入る。
手の平から熱が広がり、頭が冷えてくる。背筋を伸ばし、最初に土方さんから銃を返された時のように、弾倉を確認する。
前を向けば、遠くに用意されている的が見える。
一度、目を閉じて息を吐く。
片手で銃を構えて、照準を合わせる。
頭の中で、歯車の回る音が聞こえて。それは次第に秒針の音に変わった。
かちり、と秒針が的の中心に重なる。



懐かしい衝撃と久しぶりの轟音、だと感じた。
一瞬で六発の弾を撃ち、銃口から硝煙が一筋。
よくよく見れば、的まで結構な距離があり、パッと見ではどうなっているのか分からなかった。
的の横にいた隊士の人が、こちらに走ってくる。


「沖田隊長!」

「なんでィ」

「六発全て、的の中心に当たりました!」


その人が、的を沖田さんに見せる。
けれども、全て当たった筈なのに、的に開いた穴は一か所だけだった。


「一か所だけでさァ」

「その……一発目でこの穴を開け、残りの五発は全く同じ場所を通りました……!」

「……へえ」


嘘、と思わず呟いてしまう。そんな神業みたいな事が、自分にできるなんて、思いもしなかったから。
周りの皆が、驚嘆の声を上げているのが、聞こえる。


「これで決まりだな。は一番隊狙撃手兼隊士でさァ」

「は、はい! よろしくお願いします!」


まるで空までもが祝福してくれているみたいに、キラキラと輝いていた。
私の、新しい居場所が決まった。
笑う皆、聞こえる鳥の声。
今感じている喜びを、どう表せばいいのか、分からなかった。





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