アジトに三人で戻ると、出迎えてくれたのはルパンでも紫さんでもなかった


「おかえりなさい」

「あれ、不二子姉さん?」


昼間にはいなかった筈の不二子姉さんがそこにはいて
驚く私を奥へと促す


「どうして不二子姉さんがいるの?」

「ルパンに呼ばれたのよぉ。紫ちゃんが寝る場所ないから、私の部屋に泊まらせてくれって」


不二子姉さんも、紫さんのことを知っている
そう思うと、自分だけ仲間外れにされているような感覚になった
後ろから少し離れて歩いてくる五ェ門と大介は、終始無言

このアジトで一番広い部屋に辿り着くと
そこにはソファに座って談笑する、ルパンと紫さんがいた


「おお、おかえりぃ!」

「おかえりなさい!」


ルパンはヒラヒラと私に手を振る
紫さんが真っ先に後ろにいる五ェ門へと駆け寄った


「いきなり飛び出すから驚いたんですよ!」

「……かたじけない」


たった、それだけの事が
ひどく重く圧しかかってきた


「……私、夕食作るね。皆は座って、ゆっくりしてていいから」


震える手の平が、バレないように強く握って
急ぎ足でキッチンへと向かう




「ねえルパン。、もしかして紫ちゃんのこと知らないの?」

「ああ。五ェ門本人すら最近まで忘れてたんだ」

「最悪、最低ね……」


不二子はそっとルパンに近寄り、事情を聞く

五ェ門の許婚である紫の存在は、彼女が訪れるまで一味の誰もが忘れていた
許婚本人である五ェ門も、以前は手紙のやりとりをしていたようだが
その手紙が途絶え、そしてそれ以降何も音沙汰がなかった事から
紫が自分を忘れたものだと、勝手な解釈をしていたのだ

遠く離れ、一本の糸のようだった手紙さえも切れ
もとより年も離れ、結婚式当日まであまり顔を合わせていなかったのだ


を取るのか、紫ちゃんを取るのか……どっちにしろ、後味は悪いわね」


不二子がはあ、と溜息を吐く


「しっかしまあ、本当に五ェ門はどうしようもねえなぁ」


自分の事を棚に上げて、と不二子が呆れて、腕を組んだルパンを睨み上げた





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