温かい何かに包まれる感覚
あの夢の続きを、もう一度見たい
五ェ門に抱き締められて、愛してると言ってもらえる
幸せな夢の続き

だけど、眩しさを感じた瞼はじょじょに持ち上がる

目に入ったのは、あの牢屋でも白髪の男でもない
見慣れた、木目


「……ここは、どこ?」


どれくらい眠っていたのか
ここはどこなのか
あの侵入した男三人は、一体誰だったのか

分からない事だらけの頭は、次第に混乱し始める

起き上がり、辺りを見回す
薄いレースのカーテンが掛かった窓
ひび割れの酷い壁
そして、扉

そんな筈、ない

自分の腕を見ると、丁寧に巻かれた包帯
それから香るのは懐かしいパフュームの匂い

すると、木製の扉が動き始めた
顔を覗かせた人物に、驚かされる


「……不二子、姉さん?」

! 目を覚ましたのね!」


扉から駆け寄り、私を抱き締める彼女は確かに本物だ


「どうして、不二子姉さんが……? ここ、まさか……」

「あなた、三日間ずっと寝てたのよ?! ああ、よかった……」


涙目で私の頬に触れ、そして額をつき合せる
ぽたり、と一滴だけ、手の平に落ちた


「……なんで、私」

「そりゃあ、俺達があの組織からを助け出したからに決まってんだろぉー?」


突拍子もないくらい明るい声
ジタン・カボラルの香り
不二子姉さんのパフュームに混じって、ジダンの匂いがした


「……こんなに一人の女を心配したのは、初めてだぜ」


真面目な声で、抱き締められた
顔が見えないのに、今ルパンがどんな表情なのか
頭の裏に浮かび上がる


「もう勝手にいなくなっちまうなんて、嫌だかんな?」


聞いた事のないような、寂しそうな声
その声に、私の乾いていた目が潤み始めて


「………ごめん、なさい」


ぽんぽん、と頭を撫でられる度涙が零れ落ちる


「今次元達も呼んでやるからな」

「……あ、五ェ門は……ダメだよ」


立ち上がり、そう言うルパンに咄嗟に制止の一言を
驚いたように私を見るルパン


「だって……紫さんがいるんだもん。やっぱり……」

「その事だったら、大丈夫だ」

「え?」


そこには水の入ったコップを持っている大介がいて
相変わらずの猫背、隠れた表情
でも、口元にある煙草がなくて、その唇は少しだけ笑っている

大介は私にコップを渡すと「飲みな」と一言だけ
目に入った瞬間に喉の渇きを感じて
一気に飲み干す私を、大介は笑った

それから、私の頬を軽く抓って


「いて……」

「心配かけさせやがって、このオテンバ娘」

「……ごめんね」

「無事ならいいんだよ……」


グシャグシャと撫でられた頭
その手の平の大きさはちっとも変わらない


「……でも、大丈夫って?」

「その事だったら、私から直接話します」


扉の前に立っていたのは、紫さんだった





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