温かい陽射が眩しくて、目を開けるとそこは見慣れた木目の天井
聞こえる声を探して起き上がる


「珍しいな、が寝坊をするのは」

「五ェ門……」

「どうかしたでござるか?」

「ううん、なんでもないよ」


差し伸べてくれている手に、触れようとした


刹那、手錠が揺れる音で目を覚ます


「……夢」


目の前に広がるのは、鉄格子と石で作られた通路
遠くに見える灯りはきっと松明か何かの、炎だろう


「重症、だなぁ……つっ」


空気が流れる度、鞭で打たれた傷が悲鳴をあげる
相変わらず拘束されたままの体
空腹よりも痛みが。痛みと共にあるのは疲労感

目を閉じてしまうと、幸せな場面しか映らない事に気がついた

会った事もない両親に抱き締められたり、おじいちゃんと一緒に紅茶を飲んだり
ルパンや次元と一緒に作戦を練る場面や、不二子姉さんと一緒に買い物をしている

何よりも辛かったのは、五ェ門が目の前にいる事

目の前にいるのに、手を伸ばしてくれているのに
私はその手に触れる事ができない
どんなに伸ばしたって、どんなに近くに走り寄っても
遠く彼方にいる彼に触れる事は叶わない

瞼が下りると、五ェ門が笑ってる
私じゃない私を優しく抱き締めて「愛してる」って


「……っ、……う」


体の痛みじゃない
心が感じる痛みが、涙を流させる


「会いたいよ……五ェ門っ……」


どんなに固く誓っても、やっぱり気持ちが消える事はなくて
決心に逆らって気持ちは膨れ上がるばかり
会えない距離が、会えない事実が気持ちを増幅させる。大きくさせる


「……っ……抱き締めてよぉ」


好きだと、もう一度

自分で出てきたくせに。そう思う
だけど、溢れ出す気持ちが言う事を聞かない


「好きだって……愛し、てるって」


こんなにも愛してるなんて、知らなかった
浅ましい自分がいる事を知った
こんな自分が嫌い。人の幸せを素直に思えない自分が

それでも、私は
誰よりも一番五ェ門を愛してる


「……うあああぁぁぁっ……!」


叫んだ声すら届かないこの場所で
今、何よりも痛いのは
目を瞑るとあなたがいる事でした





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