アジトには、様々な機械が所狭しと転がっていた
そのどれもが、三日後に迫ってきた計画のための物で
その上を次元やルパンが、慌しく行き交う


「ったく! だからちゃんと整理しておけっていつも言ってんだ!」

「しょうがねぇだろーよ! なんせまだ作り終わってねえメカだってあんだから!」


そんな二人の様子を、五ェ門は部屋の隅で眺めていた

次元はやっとの事でテーブルへと辿り着くと、買ってきたのだろうか真新しい新聞を読み始めた
見出しには「世紀の科学者カトウノボルが遺伝子学に新たな一ページを!」と書かれている

時間が経った事で、ようやく気持ちの整理がついたのだろうか
アジトには以前の活気が戻りつつあった

けれど、ふとした瞬間に訪れるどうしようもない静寂は、まだ消える事はなくて
ちょうど、今この瞬間がそうであるように


「……は、元気にやってんのかなー」


ルパンが機械をカチャカチャと弄りながら、そんな言葉を呟いた
次元は「アイツのことだ、うまくやってんだろ」と気の抜けたような声で
部屋の隅で瞑想している五ェ門は、何も言わなかった

時間が、のことを全員から色褪せさせる事はなく
それどころか、日に日に会いたいという気持ちを募らせていった

けれども、彼らにはなんの手がかりもない
どこに行ったのか、誰といるのか
何も分からずじまいの彼らに、を探す手立てはなく
何よりも、五ェ門と紫を想って身を引いたの気持ちを考えると
その気持ちを汲まずに、自分達のエゴで彼女を探すのは気が引けたのだ


「五ェ門様」


重い静寂を破ったのは、扉から顔を覗かせている紫で
呼ばれた五ェ門は目を開け、紫の方に視線をやる


「天気がすごくいいんです、散歩にでも行きませんか?」

「……ああ」


五ェ門は流れるように立ち上がり「行ってくる」とルパン達に声をかけた
その背中を、次元が何も言わずに見ていて
ばたん、と閉まった扉から目を外す


「……いい加減、許してやれよ。次元、お前の手紙にも書いてあったろ?」

「分かってるさ。分かってても、納得いかねえんだよ」


次元はぐしゃりと、空になった煙草の箱を潰した
咥えているだけの煙草に、ルパンが近づき火をつけてやる


が決めた事でもか?」

「……その言い方は、ちとずりぃんじゃねえか?」


煙草を外し、紫煙がくゆる中に次元の声が消えていった





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