想いが通じた奇跡
声をかければ返事がある幸せ
握り返してくれる、大きな手の平
全部が、私のものだと。そう信じてやまなかった

ぬるま湯のような、それでいて雲みたいにふわふわしている幸せは
全てあの人が教えてくれた
何も知らなかった私の体に、あの人は
人を愛する気持ちを吹き込んでくれて

その道が永遠に続くと思っていた










「皆起きて! 朝ご飯ができたよ!」

それぞれの部屋にの声が響く
ルパン達は現在、ニューヨークのアジトに潜伏していた


「ほらルパン! そんな格好で、いつまでも寝てると風邪ひくよ?」

「うーん……が熱っいキッスしてくれたらすぐに着替えるぜぇ?」

「じゃあ風邪ひいて下さい。私は看病しないけど」

「そりゃないぜ!」


ルパンの部屋にアイロンをかけたジャケットを置くと、は次に次元の部屋に行く
部屋の主はすでに起きていたが、起き抜けから早々銃の手入れをしていて
彼の周りには酒の空き瓶や、煙草の吸殻が転がっている


「……どうして普段は綺麗なのに、銃の整備を始めるとこうなるの?」

「そりゃ、俺がそれだけコイツに夢中だからさ」

「格好よく言ってもダメ。後で掃除するから、捨てちゃダメな物はまとめておいてね」


おう、と聞いているのか分からない、抜けた返事をする次元を見て
本日、朝からすでに数回目の溜息をついた


「五ェ門ー? 起きてる?」

「ああ」

「よかった……ないとは思うけど、これで五ェ門もグウタラしてたら、私倒れちゃう」

「……あの二人はまだ着替えておらんのか?」

「いつもの事だよ」


そうが苦笑いを浮かべれば、五ェ門は斬鉄剣を持ち部屋を出て行く
数秒後、ルパンと次元の叫び声が木霊した


「いただきます」

テーブルの上には四人前の朝ご飯
ご飯に味噌汁、焼き魚に野菜の漬物、出汁巻卵
純和風の朝ご飯がズラリと並んでいる


「ニューヨークも大分日本文化を取り入れてくれてるから、食材も手に入りやすいね」

「おまけに、ちゃんと日本産のを仕入れてんだからな。これじゃ、どっちがどっちだか」

「いんやぁ〜今日もバッチグーのテイストだぜぇ! 

「ありがと」

「食事中くらい静かにせんか」

「いいのいいの、楽しく食べた方が美味しいでしょ?」


一連の会話の締めはで、五ェ門はにそう言われると
「それもそうだが……」と語尾を弱くし、頬を染めてしまう
そんな五ェ門を見ては笑い、そして残り二人の口元はいやらしく歪んだ

これがルパン達の朝の風景で
その後朝食が終わればと五ェ門で後片付けをし、その二人が率先し掃除を始める
ルパンと次元の二人は今度の計画について、テーブルの上に地図を広げ、延々と唸っている


「じゃあ掃除も終わったから、買い物に行って来るね」

「おうよ! 気をつけてなぁー」

「大丈夫だよ、五ェ門も一緒だから」


五ェ門とは、自然とお互いの手を取り歩き出す
そんな二人の後ろ姿を見て、ルパンがふと呟いた


「そう言えばよー、俺達何か忘れてねえか?」

「ああ? 今度の計画ならこの前下見に行っただろう」

「じゃなくってよぉ、なんかもっとこう……重大な事を、だなぁ」

「はあ?」


首を傾げるルパンに、次元もまた首を傾げるハメになる
そして、そんなルパンの予感が当たり、大きな嵐がやってくる事を
この時はまだ、誰も気づいていなかった





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