お互い座ったままの形で、浅い口づけを交わした
次第に癒着している時間が延び、そして開かれた隙間から五ェ門の舌がの口内に侵入する
何度か経験したそれも、前触れだと思うとの中で羞恥心が湧き上がる
それでも、必死に応えようとする彼女に、愛しさが五ェ門の中で込み上げていた


「……ふ、ぅ」


一瞬だけ離れた隙に、呼吸を繰り返す
酸素不足の影響か、その瞳は涙で潤んでいる

響く水音に、頭の端から浸食されていくのを、は感じ取っていた
応えようとすれば、それ以上にを追い立てる五ェ門の舌
箍が外れたように動き回るそれを、はまるで別の生き物のように感じていて
彼の着ているバスローブの裾を、力いっぱい握っている


「あ……っ」


ようやく離れた彼らを繋げているのは、一本の銀糸
それすらも逃さないように、五ェ門はもう一度大きく口づけた
その反動で、は再びベッドに埋もれる
今だ唇を解放してくれない五ェ門の首に、そっと腕を絡ませた

五ェ門の唇が移動を始める
頬、鼻の頭、耳、そして首筋
首筋に留まり、啄ばむように唇を宛がう

がくすぐったさに腕を捩らせた瞬間、五ェ門はそこにきつく吸いついた
の声が、くぐもる
首筋から今度は、鎖骨部分
そこにも同じような行為を繰り返し、五ェ門は一度頭をその場から離した

見下げる五ェ門が見たものは、自分が作り上げている最中のの表情

瞼を半分だけ下ろし、頬には涙の痕。そして、自分がつけた所有印
頬は上気し、薄暗い灯りの中でもピンク色に染まっている事が容易に分かる

彼の中の雄が、どくんと脈打つのを自身で感じた

壊れ物を扱うように、のバスローブの紐を解きにかかる
いとも簡単に、するりと解かれた紐
そっと、バスローブを左右に広げれば、の両腕が彼女の胸元を隠す


「……隠す必要などない」

「や、だ……恥かしい」

「恥ずべき事はない。、お主は綺麗だ」


五ェ門は、彼女の腕の下に自分の手の平を差し込む
彼の言葉に解されたのか、の腕は徐々に移動し始め
自分の胸にゆるゆると触れ、そして形を変化させるように揉みしだく彼の腕に、は自分の腕を絡ませた


「っん……ふあっ……」


息を吐き、声を堪えるように唇を噛むに五ェ門が声をかける


「そうして唇を噛んでいると、切れてしまう」

「あ……」


すでに血の滲み始めていた唇の端を、五ェ門は舌先で慰めた
震えで呼応するがそこにはいた

片方の手、指で彼女の胸の頂を押し倒す
途端、今まで大人しかったの体が跳ね上がり高い声が発せられる


「ひあ……っ!」


その反応に気をよくした五ェ門は、その指を維持しつつ、もう片方の頂を口に含む
流れ込んでくる感じた事のない快感の波に、は喉をさらけ出した
体の端々が痙攣し、五ェ門の腕を掴む手には強い力が込められる

ぎゅ、と閉じられた目の端から流れるは涙

彼の片手と口元は、胸の頂。空いた片手が次第に脇腹を辿り、そして下腹部へと到達する


「ご……え、もん」

「大丈夫だ……」


の絡まっていた筈の手は、シーツを握り
その爪先は力が籠められているのが一目瞭然で、白く染まっていた

五ェ門は胸への愛撫を続けたまま、下腹部にやった手を下着の上に滑らせる
その度にビクビクと反応する、の体
彼がの表情を窺えば、目は虚ろになり口は半開きだった
そこには先程よりもさらに妖艶に、そして確実に女へと近づいているがいた

下着越しに、なぞるだけだった五ェ門の指が不意に止まる
そして胸元からも、彼の手と頭が離れた

寄せては返す波の如く、自分に襲いかかる快感に半ば憔悴しかけていたはいささかホッとしていた
しかし、その次の瞬間彼女を襲ったのは、今までの愛撫で最も快感の波が高いもので


「んあっ」


絞り出された声
緩んでいた手の平に、力が戻る

自分でさえ、触れる事の少ない箇所に五ェ門の舌が触れていた
は最大の羞恥心に、首を左右に振る


「そこ、は……ダメ、舐めちゃ……やぁっ!」


ひっ、と声を上擦らせ抵抗するも、怒涛の如く自分を襲う快感に抗う術を、彼女は持っていなかった
響くのはしたない程の水音。それを奏でているのは五ェ門で
中を掻き回すように、蠢く五ェ門の舌
出し入れを繰り返すその度に、妖しく光る液体がの太腿を穢していく


「あ、あ……な、んか……おかしぃ、うぁ……!」


シーツを握っていたの手が、五ェ門の髪を乱れさせ
痙攣の始まる指先。収縮を始めたそこに、五ェ門はが達しそうな事に気がついた


「そのまま、身を任せればいい」

「やあ……! あ、ふぁ……んんーっ!」


言葉を発した時に触れた蕾が着火剤となり、は頭を仰け反らせ宙を仰いだ
伸びきった体のそれぞれが、縮み始め端から小さな痙攣を起こしている

五ェ門は口元を拭うと、の目線に自分の視線を絡ませて
そっと、頬に触れた


「……大丈夫か?」


肩で息をし、光を失った目では五ェ門を見上げている
の口はだらしなく開き、そこから少量の唾液が流れていた
彼女の瞼が、ゆっくりと下りる


「……て」

「何?」

「続き……し、て…い、よ」


言いながら開かれた瞼の下にある瞳には、光が戻っていた
涙を溜め、堪えるように笑顔で五ェ門を見上げる
その手の平は小さく震えている

五ェ門は、一度目を瞑りその手を取る
そしてそっと、その手の甲に口付けると「ああ」と言葉を返した

彼は再び、片方の手を下降させていく
辿り着いたそこは、の愛液と己の唾液で濡れていて
その事実に五ェ門の背筋が震える

彼の長い中指が、ゆっくりと中心に挿し込まれる
強い圧迫感。の体が強張り、呼吸が浅くなったのを瞬時に感づく
その指を少しだけ折り曲げると、聞こえなくなっていたの声が、再び響き始めた


「ふぅ……っん!」

、力を抜け」

「や、無理……っ」

「痛いのか?」

「う、ぅん……きもち、い……」


の足と足の間に、五ェ門は自分の体をねじ込んだ
必然的に彼の胸元にが納まる形になり
彼女は五ェ門の胸元に、強く自分の唇を押し付ける

不規則に動き始めた中指に、の嬌声が一層高くなる
親指で時々、蕾を押しつぶす。その度、の涙が五ェ門の胸元に流れて
増える愛液に、二本目の指が触れた


「きゃあ……ん!」


ぎゅ、と。自分にしがみついてくる
今すぐ壊してしまいたい、そんな想いが五ェ門の頭を過ぎる
彼の理性も、そろそろ限界が近づいていた

指で慣らしていくうちに、声はより高みに上り
絶え間なく響く水音に二人とものぼせ上がっている

五ェ門の指が、の中から引き抜かれる


……」

「う……ん?」

「本当にいいのだな?」


汗にまみれ、張りついた髪すら厭わずに五ェ門は、だけを真っ直ぐと見つめそう問う
も同様に虚ろな目で彼を見上げていた

こくん、との頭が頷く

五ェ門は一度、の体を抱き起こし邪魔なバスローブを取り去る
そして自分もバスローブを脱ぎ去ると、体をピタリと繋ぎ合わせた

猛る自身に、半ば呆れつつも、それよりも彼を支配するのは征服欲
目の前のを自分だけのものにしてしまいたいと

の太腿を軽く持ち上げ、そっと自身を彼女の蜜口手前まで運ぶ
彼女の腕を自分の背中に誘導すると、少しだけ困ったように微笑んだ


「ご……ぇも……?」

「痛みだけは、拙者にはどうする事もできん」


彼女に快楽を与える事ができたとしても、そればかりは
口づけを交わしたまま、彼自身がの中へと一気に貫かれた

は急な衝撃と痛み、そして同時に湧き上がる小さな快感に
五ェ門はその中の狭さと、温度に
声にならない声が、窓ガラスだけを揺らす

痛みを堪えるあまり、の爪が五ェ門の背中に傷痕を残した

最奥で自身を止め五ェ門は唇を離す
その間にもドクドクと脈打つ自身は、の中を乱して
は、口の開閉を小さく繰り返している


「動かしても……平気かっ?」

「あ、ん……も、少し……ぅん」


その声を皮切りに、ゆるりと、だが確実に五ェ門が動き始めた
緩急のない、流れるような動きにの表情が僅かながらにも徐々に緩んでいく

まだ、足りない

そんな事を頭の端で思いながらも、目の前で痛みの表情から
女へと変わりゆき、そして自分の手によって乱れている
恍惚とした表情で五ェ門は、食い入るように眺めていた

ずっと、傍で守ってきた存在を、自分の手で新しく壊している優越感
自分だけの、完璧なる女へと成り下った

穢す行為が此れほどまでに甘美なものだと、五ェ門は初めて気づかされる

もっと、もっと、もっと
自分に狂えばいい。壊れてしまえばいい

その想いは愛おしさに姿を変え、また律動を速める材料にもなる


「いっ……あぁっ……ん! はっ……ゃ……も、だ……めぇ!」

「くっ……」


の中の収縮が激しくなり、痛みの表情から恍惚の表情へ
そして恍惚の表情から切羽詰った、苦しみにも似た表情へと変化していく
五ェ門も同様に、自身に迫る最後の波を感じていた

一定のリズムを刻んでいた音の間隔が、短くなり
呼吸に合わせた、最大限の衝撃がの体を貫く


「――っっ!!」

「……くっ」


最後の最後で五ェ門の背中から離れた片腕の手が、シーツを握り体勢を保っていた五ェ門の手の平に重なる
五ェ門はギリギリまで耐え、達したの中をもう一度だけ打ちつけた
その瞬間に重なり、繋ぎ合わさったのはその手の平





NEXT