玄関から、ルパンと不二子姉さんの声が聞こえる
胸に大きな塊を抱いたまま、私は器にうどんをよそう
「たっだいまぁー! ちゃーん」と両手を挙げるルパンと
「ただいま、」と優しく笑ってくれる不二子姉さんに
私は今できる精一杯の笑顔で、おかえり、を言った


「お昼出来てるから、部屋に荷物を置いて、もう食べちゃおう?」


ええ、そうね。と今だ私から離れようとしないルパンを引き連れて
不二子姉さんはルパンの部屋に向かった

あまり、大きくないテーブルに人数分の器を置く
大介が一番に定位置に座って、次に不二子姉さんとルパンが戻ってきて


「あれ、五ェ門は?」

「あら、まだなのぉ? 部屋で何かしてるんじゃない?」

「そっか、じゃあ私呼んでくるね」


そう言って、私は写真が入ったままのエプロンをキッチンにかけて、五ェ門の部屋に向かう
先に食べていていいよ、と言い忘れないで





「五ェ門、ご飯できてるよ?」

「っ?!」

「どうかしたの?」

「いや……今日も掃除をしてくれたのか?」

「う、うん。それがどうかした?」



部屋に入ると、私が写真を見つけた箪笥の近くで何かを探していて、しかも慌てている五ェ門がいた
私の顔を見るなり、そう聞いてくる



「何か、見つけなかったか?」

「……何かって?」

「その……写真とかを」



あからさまにバツの悪そうな顔で、そう聞くから
思わず「見てないよ」と、口から嘘が飛び出た

嘘を吐いたって、なんの意味もない
意味なんてあってはならない
だけど、あんまりにも五ェ門が慌てているから
あの写真には何か、秘密でもあるんじゃないかと疑ってしまう


「見つけたら、すぐに返すよ。だから、お昼食べよう?」

「あ、ああ……」


五ェ門の着物の袖を握って、私は部屋を出る

でも、こんなにも傍にいるのに
息遣いも、体温もすごく近くにあるのに
どうしてか五ェ門がすごく、遠くにいる気がして

泣きそうになる
思わず出そうになった涙達を、私は無理矢理押し込めた








リビングに戻ると、三人とも半分くらい食べ終えていて
私は急いで五ェ門の分と、自分の分を用意して席に着いた
湯気がふわふわと浮いて、そして天井にぶつかる
「今日も美味しそうだな」と言う五ェ門の褒め言葉に反応が、遅れた


「え、あ……うん、ありがと」

、体調でも悪いのか?」

「ぬあにぃ!? が病気?! すぐに医者を呼べ呼べぇ!」

「う、ううん! 全然平気へいき! ほら、この通り!」


両腕を、上下させる
それでも安心できないのか、五ェ門は訝しげに私を見て
ルパンに至っては、携帯で病院に電話をしようとしていた



「ああ、これだから男ってのは! 、この後息抜きにお茶でも行かない?」

「え、でも、後片付けとか……」

「ほらぁ、そうやって何でもやろうとするから疲れるのよ! 私が奢ってあげるから」



後片付けなんて男にやらせればいいのよ、そうウィンクまでされてしまうと
あの写真が気になって元気がないんです、なんて言えなくて
私は「ありがとう、お言葉に甘えるね」とだけ返事をした

その時、机の下で手の平を握られた
思わずそこを見れば、握っていたのが五ェ門で



「大丈夫だよ」



力なく笑えば、やっぱり心配そうに眉を顰める五ェ門がいた









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