その日は朝から土砂降りだった
いつもと同じように起きて。朝ご飯を作ったり掃除をしたり
どこにも行けないからと、ずっとリビングにいたルパンとトランプをしたり
銃のメンテナンスを大介としたり、と
すごくのんびりした一日を過ごした


「今日は早めに夕飯作るね」


そう立ち上がったのが、夕方の六時で
小さな冷蔵庫に向かい、中の食材を確認する


「あ」

「どうしたんだ、

「卵がない。どうしよう」

「卵くらいなくったって、夕飯は作れるだろ?」


私は、うーんと唸って
そしてエプロンを外して、財布を掴んだ



「ちょっと卵買いに行って来るね」

「この雨の中をか?」

「なんならデートついでに、俺っちが行ってあげよっか?」



私は軽く笑うと、大丈夫だよ、と
傘の柄を握って、いってきますと声を出した




アジトを出れば真っ暗な空と、ザーッと音を奏でる雨が私を出迎えた
雨のせいでひんやりとした空気に、少しだけ肩を震わせて
私は傘を開き、雨の中を歩き出した








「やっぱり一緒に来てもらえばよかったかな……」



よくよく思い出せば、ここはスラム街
まだ夕方だというのに、既に辺りはおかしな雰囲気に囲まれていて
数人の男の人が、私を見てはスラングを投げかける



目当てのコンビニを見つけて、私は颯爽と中に逃げ込む
何かに追われている訳でもないのに、雰囲気に呑まれてそうしてしまった
店内をキョロキョロと見渡せば、あまり質が良くなさそな卵を見つける
私は陳列されている棚に近づき、一つをカゴに入れた

早く帰ろう、そう思いながら会計を済ませたのが六時半

コンビニから出れば、さっきまで見かけていた男の人達は姿が見えなくなっていた




「いない、今の内に帰らなきゃ……」



足早に、コンビニの前から立ち去る
電灯だけが光る、暗い暗い路地裏で
私の靴音だけが響く







「そんなに急いでどこ行くんだい?」







急に掴まれた右腕が感じたのは、危険信号だった







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