それはがルパン一味に加わってからすぐの事
アジトのリビングで、ルパンがとある設計図片手に唸っていた
は慣れない手つきで、ルパンの近くを掃除している

唸っている声に気づいたのか、がそっとルパンの後ろから設計図を覗き込んだ
彼女にはそれが、一瞬で何かの機械の設計図だと分かった



「どうしたの?」

「んん? いんやあ、ここの配線がちょっとややっこしくて……ってに言っても分かんねぇか」

「ここの配線を、このプラグに繋ぐとうまくいくと思うよ」

「へ?」



の指が、設計図の上を動く
ルパンはその言葉を聞き、頭の中で組み立てていく
すると、不思議な事に今まで苦戦していた事が嘘のように
思い浮かべていた機械が出来上がった


「おお! 出来た出来たぁ!!」


ルパンは慌しくラボへと走って行った
その場に残されたは、笑顔で掃除を再開する

数十分後、ルパンが所々黒焦げになりつつ、その手に思い描いていた機械を持ちながら
掃除を終え今度は料理の準備をしているがいる、リビングへと舞い戻って来た


「真っ黒だよ、ルパン。お風呂に入る?」

「いんや、大丈夫。……それより、どうしてさっきあの線をアレに繋げると思ったんだ?」



やけに真面目な顔でルパンがに聞く
はキョトン、とした表情でルパンを見上げた



「特に……ただ、頭の中でそう組み立てられただけだよ」



一瞬、何かに怯えたような表情で言葉を止めたが、またすぐに笑顔でそう言う
ルパンもその表情に気づいたのか、それ以上追求はしなかった
「んま、助かったぜ?」とルパンが、の頭をクシャクシャと撫でる






その日の夜、が寝静まった頃
リビングには以外の面々、ルパンに次元、五ェ門に不二子が揃っていた


「こんな夜に何の用よぉ、夜更かしは肌に大敵なのよ!」

「まぁまぁそうカリカリすんなって、不二子ちゃん」


言いながらルパンは、いくつかの束になった書類のような物を机の上に出す
それぞれの資料に面々が手を伸ばし、パラパラと捲った


「これ……」

「ルパンお前、どこでこれを……」


その書類にはの正体や、どうしてあんな状態で捨てられていたのか
全てが書き記されていた





の両親は、世界有数の発明家で様々な組織にその実力を買われていた
重火器からコンピューター、薬品まで、文字通り無から有を作り出すかのように
その世界の人間からは「魔法使い」とまでも言われる程の実力者だった

が幼い頃は一緒に暮らしていたが、ある仕事を断り追われる身になってしまい
泣く泣く施設に彼女を預けた事、そして彼女の居場所を言わずに
とある組織に殺されてしまった

その組織は、両親だけではなくにまで手を出した
両親が残したある「発明品」を知る、ただ一人の人物である
彼女からその「発明品」の在り処を聞き出す為に、暴力をはたらいた事も
何も知らない、としか言わない彼女を結局捨てた事も
全て克明に記されていた


「惨過ぎる…どうしてあのように幼い少女に……!」


五ェ門の悲痛な声に、誰しもが言葉を吐かなかったが同調の念を思う


「発明品ってのは…ルパン、見当でもついてんのか?」

「ああ……これは本当に、根拠もなんもない俺の推測だが……」


の両親の「発明品」


「きっと、自身が両親の「発明品」だ」


その言葉に全員が目を丸くさせた


「今日の昼間にな、俺が苦戦していた設計図、いとも簡単に解いちまったんだ」


ルパンはそう言うと、昼間に格闘していた設計図をヒラヒラと見せる
もう片手には、出来上がった機械を持ちながら


の両親は、その頭脳をそっくりそのまんまに受け継がせたんだ」


あくまでも、憶測だげんどよ。と言葉を締める
でも、そんな事。と言葉を濁す不二子に、ルパンがある発明家夫婦の名前を告げた
と苗字の違う、その世界の者ならば誰でも知る名前を



「世界初の人工知能を作り上げた夫婦だ。自分達の知能を暗号化して、送り込むくらい造作もないはずだ」



驚きを隠せない三人に、ルパンがもう一言だけ口を開いた



「これは、には秘密だ。だからと言って、あの子を特別視しちゃそれこそ酷だ」



普通に、流れに任せての成長を見守るんだ
酷く窪んだ声でルパンが言った








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