それからと言うものの、ルパン達の生活にこれと言った変化はなく
強いて言えば、家事をしてくれるがいる事で
アジトの生活にも潤いが増した、くらい

ルパンの「が発明品」理論はその生活の中で、くっきりとした物になっていく

家事に到っては元々の素質なのか、すぐに慣れ
一ヵ月もする内には、ほぼ「主婦」になっていた
朝は誰よりも早く起きて、朝食を作り掃除をする
洗濯や買出しも、ルパン達に手伝ってもらいながらも、完璧にこなしている


ルパン達が盗みの下見に行く際には、必ずアジトには誰か残るようになった
主に、室内での精神集中を行っている五ェ門が、その役目をしていたが
一時期は三人で留守番争奪戦にもなった事がある


が、家事以外で暇な時
そんな時は大抵、ルパンのラボで機械弄りをしていた
その機械弄りも、子どもが遊び道具にするのではなく
列記とした「発明家」として、機械やコンピューターを操作する

その日もその日とて、ルパンのラボでは何かを作っていた
器用にルパンの工具を使い、次々に小さな「何か」を生み出す


「何を作っているのだ?」

「五ェ門!」


以前なら、立ち入らない筈の五ェ門が
彼女がいる、と言う理由だけでラボに入ってきた
は五ェ門の声を聞くと、嬉しそうに振り返り
大きなオレンジ色のゴーグルを外した



「ルパンが使う睡眠弾の改良してるんだよ」

「改良?」

「うん、少しでも撃たれる人の痛みが軽減出来るようにしてるんだ」



確かに、の言う通り彼女の前には、銃の弾丸と
よく分からない薬品の入ったビーカーや、火薬などが転がっている
他にも、足元に大量に積まれた分厚い本や、印刷物


「試し撃ちとかは、勿論出来ないから確証はないんだけど、計算が合えば今までの、五分の一くらいの痛みになるの」



言いながらはまたゴーグルを装着した
手袋をはめ、また銃弾に向かう
五ェ門はそんなの横顔を、チラリと盗み見る



その横顔が、あまりにも綺麗で

あまりにも、儚くて

今にも消えてしまいそうに、五ェ門には見えていた



「……五ェ門? どうしたの?」

「…いや、何でもない」



五ェ門は後ろからを抱き締めて
はそれに驚きを隠せなかった
だけれども、ぎゅ、と抱き締めてくれる五ェ門の腕が
にとっても確かに安心出来るもので
その場の時間が、ゆっくりと流れていく



「なーにしてんのかなー、五ェ門ちゃん?」

「っ!!!!」




を抱き締めている五ェ門の腕に、にゅるりとルパンの腕が絡みつく
それに驚いた五ェ門は、思わず抱き締めていた腕を離した



「一人で抜け駆けなんて、五ェ門も隅に置けねえなぁ」

「な、何が抜け駆けだっ!!」

「いいなぁ、にハグ出来て! 俺っちもしていい?」

「え、あ、うん、いいよ?」



いつの間にやら、五ェ門の前からの横に移動していたルパンは
そうに聞くと、迷う事なくに抱きついた

くすぐったそうに身を捩るの顔は、もう笑っていた









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