不二子の言葉通り、空の色がほぼ藍色になった頃
ルパン達のアジトの下で、彼女の運転する車のエンジン音が聞こえた

あの携帯での会話が効いたらしく、五ェ門はその後は
ようやく大人しくなったが、それでもほんの少しそわそわして
耳に入ったエンジン音に反応し、即座に扉を開け放つ


そこには両手に大荷物を抱え、驚いた不二子がいた


は?!」

「なあに、私には労いの言葉もないわけっ!?」


五ェ門の言葉に不二子が食って掛かるが、五ェ門はほとんど意識が飛んでいる
呆れた顔をしながらも彼女は、後ろにいるを見た
そっと、不二子の背中から出てきたに、思わずその場にいた男性陣が唾を飲み込んだ

ただいま、とはにかむは見違えていた
伸びっ放しの髪はキチンと整えられ、艶やかで
着ている服も不二子の見立てなのか、女の子らしい物だ


「いやあ、本当に別嬪さんになって帰ってきたなぁ」


ルパンが駆け寄り、マジマジとを眺める
そんなルパンには、はにかむ目をもっと細めた
次元も、冷静に振舞っているつもりか、あちこちに視線を飛ばしている
が、結局がどうしても気になるのかそちらに視線が行ってしまう



「五ェ門?」



ルパンの肩越しに、心のどこかでは、が一番会いたかった五ェ門に声をかけるが
当の本人は思わぬ事態に、フリーズしていた



「五ェ門」

「はっ……!」



自分のもとに駆け寄っていたに、ようやく我に返った五ェ門
しかし、自分を見上げるにどうしても、赤くなる頬を隠せなかった
そんな彼お構いなしに彼女は、クルクルと回る


「どう? 綺麗になったでしょ?」


その言葉にまた、一同驚きを隠せなかった
聞かれた五ェ門はああ、やらうむ、やら声にならない声をあげている



「その……とても、綺麗になったな」

「本当?!」



もうこれでもか、と言うほど顔を赤くした五ェ門に追い討ちをかけるように
彼の腰周りにぎゅ、と抱きついた

その光景を面白そうに見るのは不二子、羨ましそうな眼差しを送るルパン
次元に到ってはもう、空中を見る他なかった

そう言えば、とルパンが声を上げた


にはまだ、俺達が泥棒だって事言ってなかったよな?」


五ェ門に抱きついたままのが、驚いた顔をする
周りの一同も、口をあんぐりと開けていた



「泥棒?」

「そう、俺達は泥棒さ」

「ル、ルパン! お主、なぜ今それを……!」

「今言っても後に言っても、事実は変わんないだろ?」



慌てふためく五ェ門に対し、ルパンは到って冷静
確かにルパンの言う通りだ。他の二人は思う

その時、静かにが口を開いた



「泥棒って、ルパン達は何を盗むの?」

「んんー、そうだんなぁ……宝石とか、美術品とかか?」

「俺に聞くなっ!」



次元にそう言われ、ルパンは困ったように笑いながらを見た




「盗む時に、誰か傷つけたりするの?」




ぎゅ、との手に力が入る
五ェ門がそれに気づき、そっとの顔を垣間見た
の顔には、僅かな動揺とほんの少しの恐怖心が混ぜられていて


「誰も傷つけやしないさ。ただ、俺達は盗む事に美しさを見出しているんだ」


語るように、ルパンは優しい口調でに言う
その言葉に安心したのか、の手に入っていた力が次第に和らいでいった


「それなら、私も今度やってみていい?」


キラキラと好奇心に輝く瞳にはもう、恐怖心など微塵にも残っていなかった
その場に流れたのは、少し呆れた溜息と
自分達を認めてくれたへの、安心感だけだった


そして彼らは後に知る事となる
彼女がただの少女では無い事を
また、どうして彼女があんな風に捨て置きされていたのかを









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