が不二子と買い物に出てから、五分が経った
ルパンは椅子に座りながら煙草を吹かし、次元は愛銃の整備を始めた
ただ一人、五ェ門だけが落ち着かずソワソワと扉の前を行ったり来たりしている


「五ェ門ちゃーん、いくらなんでも心配しすぎじゃねえんの?」


ルパンがげんなりした顔でそう言うが、右から左のようで
まるで聞こえていないかのように、相変わらず五ェ門は扉の前を行ったり来たり
呆れた彼はもう、何も言わなかった

その頃不二子とは、まず美容室へと向かっていた




「変にウェーブかけたりするより、シンプルに切った方がいいわね」


こんな感じにしてちょうだい、と不二子は美容師に伝える
は椅子に座らされ、鏡越しに不二子を見ていた
エプロンをかけられくすぐったそうに身を捩る

美容師の声に反応しながら、パサリ、と
伸びっ放しにされていた髪が切られていく



数十分後、待合室で雑誌を読んでいた不二子の下に
店員に連れられたがやって来た

「おかえりなさい」

「ただいま」

不二子は言葉を躊躇った
目の前にはニコニコと、嬉しそうに笑う
あまりにも、第一印象と違い過ぎて、思わず言葉を失ってしまったのだ


「切る前から可愛いとは思っていたけど、これ程とはね」

「え?」

「将来が大変そうだわ」


カットされ、またケアもされ艶を取り戻したの髪を触りながら不二子は言う
美容師に代金を渡し、不二子はの手を握りながら扉を開けた

青いTシャツに、大きなジーパンを履いていても
髪を切ったは充分に女の子として見れるようになっていた
外に出た途端、不二子とを見る男達の目が、何よりの証拠だ


「さ、次はその服をどうにかしなくちゃね」


キョロキョロと辺りを見回すにそう声をかけた時だった
不二子のハンドバックに入れられた携帯が震える
何事かと、怪訝そうな顔で取り出せばかけたきた相手はルパン
渋々、苦い顔をしながら不二子は電話に出たが
相手の声を聞いて、驚きを隠せなかった



「もしもし」

『不二子か?! はどうした?!』

「……まさか、あなた五ェ門? どうしてルパンの携帯」

『その話はいい! は無事か?!』

「………、五ェ門よ」



不二子は、が怖がらないようにと一度呼吸をしてから、彼女に携帯を渡した
は五ェ門の名前を聞くと、ぱあっと先程以上に顔を明るくして電話を受け取る



「五ェ門?」

! 無事か? 不二子何もされていないか?』

「うん。髪をね、綺麗にしてもらったんだよ。それで、今から洋服を買いに行くの!」



の嬉しそうな声を聞いて、ようやく五ェ門も安心したようで
そうか、それならよかったと告げた


「綺麗になったから、五ェ門、アジトに帰ったらちゃんと見てね?」


その言葉に、携帯越しの五ェ門は愚か、不二子までもが驚いた
携帯の向こう側で誰かが転んだ音がして、は不思議そうに首を傾げる
不二子がその様子に気づき、そろそろ行くわよ、とに声をかけて
携帯に耳を押し当てた



『不二子貴様! に何を吹き込んだ!!』

「やあね、人聞きの悪い。あれはあの子が自分で言ったのよ」

『なっ!!』

「じゃあね、もう車に乗るから切るわよ」



ぴ、と電子音で通話を遮断した。向こう側でまだ五ェ門が吠えていた気がするが
不二子は深く考えずにに言う


「それじゃあ、五ェ門達がビックリするくらい綺麗になりましょう!」

「うん!」



意気揚々と、二人はまた手の平を繋いで歩き出した









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