古惚けたアパートメントの階段を上る
先頭にルパン、その後ろに、五ェ門、次元と並んでいて
それぞれの足音が、狭い通路に木霊した


「必要な物は後で不二子と一緒に買いにでも行くかぁ」


ルパンはアジトの扉の鍵を開けながら、何も持たずに後ろに佇んでいる
そう声をかけた

今のの格好は、闇医者の所にあった大きな青いTシャツに
明らかにサイズが違い過ぎるジーパンだ
箱の中に入れられていた時に纏っていた物は、お世辞にも服とは言いがたく
不憫に思った闇医者の、小さな気持ちだった


は、ルパンに中へと案内され、少し躊躇いながら奥へと進んだ
そこは到って普通のアパートメント。古めかしい所を除いては
どことなく浮き足立った気持ちで、後ろにいる三人をは振り返る
その表情には驚きと喜びが表れていて

人懐っこい笑顔を浮かべて、ありがとうございます、と



「そうそう、俺達には敬語なんざ使わなくていいんだぜ?」

「え?」

「これからは一緒にいるんだし、そんな他人行儀にしなくたっていいってぇ!」



な? とルパンはに駆け寄り、その体を持ち上げた
急に与えられた浮遊感に驚きつつ、照れたように声を出す


「ル、ルパン……?」

「そうそう!」


くるくると回転木馬のように回るルパンの腕で、は楽しそうに笑う
床に戻され、ふらふらになりながらも今度は次元の元へと歩み寄った


「次元さんも敬語はいらないですか?」

「……ああ」


見上げられ、バツが悪いのか次元はそっぽを向きながら答えた
次元の名前は、ルパン達が何度も呼ぶから分かっていたものの
それが苗字なのか名前なのか、判断がつかなくて


「次元さんは、名前なんて言うんですか?」

「次元大介だ」

「大介……?」


はにかみながら自分の名前を反復するを、不覚にも
彼は「可愛い」と口走りそうになった


「やべぇ……俺まで毒されてやがる」


そう言いつつも目線は、足元でにこにことしているを見てしまう


「五ェ門さん」


今度はすぐ隣にいた五ェ門に声をかけた
五ェ門は、の目線に合わせる様に屈む


「拙者も敬語はいらぬ」

「……五ェ門!」


その言葉を聞き、は今までにないくらいの笑顔で
嬉しそうに五ェ門の名前を呼んだ

その笑顔に、まだ幼さが残る筈なのに
どこか年齢相応に見えない気がして、ならなかった


「男が皆呼び捨てなら、私は何て呼んでくれるのかしら?」


その声に全員が扉の方へと首を向ける
扉の横には不二子が、壁に凭れながら一部始終を見ていて
「ルパン一味も形なしね」と苦笑交じりの冗談を言った


「不二子姉さん!」


なんの躊躇いもなくは、不二子を姉と呼びながら駆け寄った
その声に一同は一瞬面を食らったが、嬉しそうに不二子の腰にしがみつくを見ると
誰も異を唱える者はいなかった


「さ、せっかくの可愛い顔が、そのままだと台無しよ?」


言いながら不二子はしゃがみ、の伸びたままにされた髪に触れる


「一緒に、お買い物してくれるの?」

「ええ、喜んで」


その言葉に一層は嬉しそうに笑う
不二子は彼女の手の平を取り、扉へと向かった


「夜には帰すわ」

「おう、よろしくな」


三人を振り返り、は手を振った









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