熱も下がり、動いても問題がない程に傷が回復したを連れ
ルパン達三人は、アジトへと舞い戻った

病院と呼びがたい建物を出て、の目に入ったのは黄色い、小さなフィアット
正直、この三人が乗って定員オーバーではないのだろうか、と不安になる


「俺っちが運転で、後ろに次元と五ェ門となー」

「おいルパン。いくらが小さいからって、三人はキツイだろ」

「んー? だったら次元か五ェ門のお膝の上にでも乗せてやりゃあ、いいじゃないの」


その言葉に三人共々驚かされる
驚嘆の表情を浮かべる三人にルパンは、何なら俺が乗せてあげてもいいのよー、と笑う


「……言いだしっぺはお前だ五ェ門。お前の膝の上に乗せてやれ」

「なっ……!」


そう言うか早いか、次元はさっさとフィアットの後部座席に乗り込む
ルパンもそそくさと運転席に乗り込んだ

残されたのは、顔を赤くした五ェ門と縮こまってしまった


「……仕方がない。

「はい」


五ェ門はの手を引く。が、その手首の細さに驚き
そして後ろの存在に視線をやる

自分より、頭何個分も小さな背を持ち、今も自分を見上げる彼女
その頬にはまだ完璧には治っていない傷のせいで、大きなガーゼが貼り付いていて
痛々しいのに。それでもは五ェ門を見上げて嬉しそうに笑っている



「五ェ門さん?」

「いや、何でもない」



先に五ェ門が乗り込み、の手を引いた
おずおずと恥かしそうに、五ェ門の膝の先端に
ずり落ちそうに、また遠慮がちに腰掛ける


「そのままでは落ちてしまうぞ」


悪いと思いつつも、半ば無理矢理五ェ門は自分の胸の中にを仕舞いこんだ
途端、は耳まで赤くさせ、先程以上に体を小さくした


は、触れた箇所から抱き上げられた時のことを思い出す
そう言えば、あの時もこのくらい温かかったな、と


「五ェ門さんって……あったかいですね」


首を傾け、頬を赤くさせたままは呟いた
その表情に車の中の温度が、一瞬上昇し
ルパンが妙な咳払いをして、フィアットのエンジンをかける





車の中から見える、くるくると変わっていく景色には酷く感動していた
彼らにしてみればどうって事ない普段の風景も
ほとんどの記憶がないにとっては、新しい経験で
窓に手をつき喜ぶ彼女を、五ェ門は唇で弧を描きつつ見つめていた


その間、三人は闇医者に言われた事を辿っていた


『彼女は強い精神的ショックと、身体的ショックにより記憶を失っている。ただの記憶喪失とは違って厄介なのが……』


記憶が戻る見込みは、ゼロに等しいという事

身体的ショックは何が原因なのかは一目瞭然だった
けれども、彼女の精神が受けたもう一つの傷
親に虐待を受けていたのか。それとも、別の何かが?

三種三様の考えが、彼らの頭を掠めるが
霧に包まれたように何かが隠されていた



「ほら、もうすぐ着くぞぉ」



やけに明るいルパンの声が車の中に響く









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