すやすやと眠る少女の手を、そっと離す五ェ門
その背中に次元が言葉を投げた


「その子は施設に預けた方がいい」


一応気遣ってなのか、彼の口元にはいつもの煙草がない
ルパンは何も言わず二人を交互に見る
それは慌てているからではなく、ただ穏やかに流れる経緯を見ているだけ


「拙者は、先ほども申した通り、彼女を……を手元に置きたいと思う」

「五ェ門よ、お前正気か? 子どもなんて俺達の手元に置いたところで、なんの役にも立たねぇだろ」

「それでもこうして助けたのも、きっと何かの縁だ」

「じゃあテメェは、これから助けた奴ら全員手元に置くつもりか?」


苛立ちが募ってきたのか、次元の語尾が荒い
それに対して五ェ門は到って冷静だった
もうこのまま言葉を投げ合っても、平行線を辿るだけだと悟ったのか
次元は機嫌が悪いのを敢えて晒すかのように、椅子にドカリと座った



「だったら、ちゃん本人に聞いてみっか?」



今まで黙っていたルパンが、彼女の頬を突きながら言う
その顔には笑顔を乗せて

ルパンの言葉に賛同なのか、次元も五ェ門も何も言わなかった







翌朝が目を覚ますと、一度アジトに戻った三人はまた
今度は不二子を連れて闇医者のもとを訪れていた


「あなたが、不二子さんですか?」

「ええ、そうよ。大きな怪我とか病気がなくてよかったわね」

「……ありがとうございます」


ベットから上半身を起こして、はペコリと頭を下げた
その仕草と照れた表情に不二子は既に、にノックアウトされている


「何この子! すっごい可愛いじゃない!!」


豊満な不二子の体に抱き締められ、少々苦しみながらも
久しぶりに感じた誰かの体温に、は嬉しそうに頬を緩めた

その微笑んだ顔に、不二子以外の三人も心揺らがされたのも
また誰しもが知る事実


「それで、いきなし本題で悪いんだけどよ」


ルパンがの視線を戻す為、ヒラヒラと手を振る


「君は、これからどうしたい?」


どうするつもりだ? と聞かないのが彼の優しさなのか
はただ、ポカンと顔を呆けさせる


「まあ、いきなり言われても分かんねぇか」


ポリポリとルパンは後頭部を掻く
ぴ、と指を二本立て、にんまりと笑った


「君には帰る場所がない。そうだろ?」

「……はい」

「だったら道は二つ。傷が回復し次第、施設に行くか……それとも正体不明の俺達について来るか」


こっちの指が施設で、こっちが俺達のところな。とルパンが指を曲げる
はやはり、戸惑った表情で考え始めた

彼女はそっと、未だに自分を抱き締めている不二子の顔を見上げて
それから、ルパンと次元、最後に五ェ門の顔を見た



「私は……」



はおずおずと指を伸ばし、ルパンの片方の指を掴んだ
その指は『ルパン達のもとにいたい』と言う
声なき意思を表した指

ルパンは一瞬驚き、それから嬉しそうにその指を動かす



「これからよろしくな。小さな助手さん」

「じょ、助手?」

「おう。そうだろ? 次元、五ェ門」



振り向けば次元はやれやれ、また大きな荷物背負い込んだもんだと、悪態をつき
五ェ門は心なしか嬉しそうにはにかんでいた





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