薄暗い廊下を辿る。なんていうか悪趣味な場所だ
息苦しくなるような、そんな感じを醸し出している

不意に、誰かの声が聞こえた


「御託聞き飽きたネ。さぁ、答えるネ、どこデータ?!」

「しつっけーなぁー……まぁあんたの意地に免じて答えてもイイネェ」

「どこ?!」


私は声のする扉の前に立ち、鍵を見る
古い南京錠。簡単なキーピックで開く物で
自分の手首に仕掛けてある道具で、その鍵を開ける


「渡しちまったんだぁ」

「誰に?!」


扉を開ければ、黄色い服を着た小太りの男とそんな会話をしているルパンがいて
ルパンは変なロケットに括りつけられていた
黄色い男の後ろにはもう一人、細身の長髪の男が立っている


扉を開けられている事に、まだ気がついていなかった
ルパンが顎で、あたし達の方を差せば二人はこちらに視線をやる

「うえ?!」

長髪の男がナイフを投げてくる。私と大介はそれをスレスレのところで避けた
一瞬の隙を突いて、大介が二人の武器を打ち落とす
宙に舞う、趣味の悪い鞭とナイフ
私はナイフと鞭をキャッチして、男の間をすり抜けルパンのもとに
鍵をナイフで壊し、鞭をルパンに渡した


「んふふふー、さすが次元ちゃんとちゃん。パフォーマンスな助け方してくれんじゃーん」

「大丈夫? どっか怪我とかしてない?」

「大丈夫だいじょーぶ!」


そうルパンは笑顔であたしの頭を撫でる
ようやく私はホッとできて、少しだけ涙が滲んだ
もう一度ルパンを見れば、今度は何か企んでる笑顔で黄色の服の男に何かを言っていた


「俺言ったよなぁ? やられるより? 攻める方が好きだぁってー!」


鞭がしなって、黄色い男に巻きつく
ルパンが勢いよく鞭を引っ張れば、クルクルと回転し始める男
回転しながら男は、私とルパンの方に寄って来て
ロケットに追突したと思ったら、鞭でグルグル巻きにされてしまっていた


「あーばよう」


そう言いながらルパンはジッポで、導火線に火を灯す
火はあっと言う間にロケット本体に近づいて。そのまま打ち上げられて天井を突き破った
見えた空はオレンジ色。爆発したロケットはまるで花火みたいだと思った


「たぁーまぁーやぁー! てか。さて、攻守交替だ。今度はそっちに吐いてもらうぜ」


大介がもう一人長髪の男の手を持って、私達の側に歩いてきた


「無駄だぜ。ハイエナは死んでも吐くような奴じゃねぇ」

「え? 大介、この人と知り合いなの?」

「ああ、昔ちょっとな」

「……だったら忘れてねぇよな、次元大介……俺が、歩く武器庫って言われてんのを!」


言った途端、男は何かのスイッチを押す
すると、胸の防弾チョッキから火花が散って。思わず避けてしまう
「オマケだ!」と叫んでナイフまで飛ばしてきた



「今度はケリをつけるぜ! あばよ!!」



男の人は軽々と突き破られた天井から脱出した
オレンジ色に、その人の着ていた戦闘服の濃緑の色はなぜかとても映えた


「物騒な野郎だぜ……」

「ハイエナ、か……奴まで絡んでるとなると、結構手強いぞ」

「なぁに。それ以上に手強い相棒と助手が、俺にはついてっからよ」


そう言ってルパンは大介を見て、私の頭をもう一度撫でてくれた
大介は笑って、私は頷いた
突き破られた天井からルパン、大介、私の順で脱出する


「それにしても、よく俺の居場所が分かったな」

「ルパンに頼まれてこの前、あのメモリーカードと本体にGPS機能つけたでしょ? アレだよ」



そう言いながら手を伸ばせば、ルパンが穴から引っ張り出してくれた
「不二子と五ェ門は?」と聞くルパンの声に、手の平の力が抜ける
込み上げてきたのは、寂しさだった



「ルパンより、ゴールドだって言って……助けにも来ようとしなかったよ」

「あ、そっう……ん、ここは……アルカトラズ」

「アルカトラズ?  聞いたことあるような……」

「そう。アルカポネ、マシンガンケリーなど当時最悪と言われた、悪の中の悪を収容していた全米で最悪の刑務所……ザ・ロック。ま、今は観光名所だがな」



ルパンが大介から煙草を貰って、火をつける
橋の上に太陽が沈んで、海が紫とオレンジのグラデーションに変化していた
カモメが鳴いて、波が動いて、潮風が吹く

今頃、あの二人は何をやってるんだろう
それから、どうしてこんな観光名所にルパンを監禁したんだろう
そもそも、どうしてここがマフィアに使えたのだろう



堂々巡りの一人の思考は「よっし、行くか!」というルパンの声にかき消された










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