テーブルの上に、カラフルなサラダ、トマトパスタ、ポタージュが並ぶ
どちらともなく食べ始める

不安気な瞳が、ジェイクを見つめる
分かっていながら、彼は黙々と食事を口に運んだ

「……美味しい?」

「不味くはない」

その答えに、はホッとしたように笑った

「おかわりあるから、たくさん食べて」

「おう」

フォークと皿がぶつかる音が響く
一通り食べ終えたジェイクが立ち上がる
キッチンに行き、パスタを皿に盛る

「……あの、さ」

「なんだよ」

「お願いがあるんだけど……」

フォークが空中で止まった
ジェイクが見れば、の皿は殆ど減っていない
ずっと、言い出すタイミングを窺っていたかのように

「ここに、住ませてほしいの」

彼の目に、彼女のつむじが映る

「断る」

「ええ!」

「なんで見ず知らずの奴、住まわせなきゃいけねえんだよ」

「そこをなんとか……」

両手を合わせ、必死に頼み込む
ジェイクはどうにかして、諦めさせようと考える

彼はフォークをテーブルに置くと、すぐ目の前にある顎を掬う
目を見開き、何事かとはジェイクをまっすぐと見つめた

「毎日体で家賃払うなら、考えてやってもいいけど」

本当はそんな気はさらさらなかった
ただ、そう言えば諦めるだろうと思ったから

けれども、ジェイクの予想を裏切り、は違う反応を見せた

「体でいいなら、いくらでも払うよ」

にっこりと、音がつきそうなくらいの笑顔で
言い出したジェイクの方が戸惑ってしまいそうな返答
慌てて顎から手を離し「バッカじゃねえの?!」と怒鳴る

「そういう事、簡単に言うなよ!」

「でも、それで住まわせてくれるなら、いいかなって」

「……だあっ!」

バン! とテーブルを叩く
ジンジンとした熱が、ジェイクの手の平全体に伝わる
はまた目を開いて、片手で目を覆ったジェイクを見た

「……家事」

「ん?」

「家事やるんなら、少しの間だけいさせてやる」

「本当?!」

「ただし! ちゃんと払うもんは払えよ」

「体で?」

「金でだ!」

分かった、と頷くに、溜め息を吐くジェイク
厄介な女に捕まった、と数時間前の自分を呪いたくなる心境だった
それでも、どことなく楽しそうな彼女を見ていると、それでもいいかと思えてしまうのも不思議だった
面倒な事をやらせればそのうち勝手に出て行くだろう、と考えた

「働く場所探さなくちゃ。あ、ジェイクと同じ所で雇ってもらえないかな?」

「お前に傭兵が務まるとは思えねえ」

「これでも強いんだよ」

そんな事、分かっている、とは口に出さなかった






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