の動揺が、ジェイクに伝わる
彼の手の中でグシャグシャになってしまった写真を、は見た


「……なんとか言えよ!」


立ち上がり壁を殴る
は肩を竦めた


「……ごめん」


それは肯定を示す言葉だった

ジェイクは、写真を見た後でも、の否定の言葉をどこかで待っていた
「親父って、どういうこと?」と笑って言って欲しくて
だけど彼女は笑う事もなく、謝罪の言葉を口にした


「俺は、親父の代わりか」

「違うっ! 私は……!」


言葉は続かなかった
ジェイクがを見れば、彼女は涙を零していた
泣きたいのは、こっちの方だ
彼の手の平から、写真がひらりと落ちていく


「……出て行け」

「ジェイク」

「顔も見たくねえんだよ!」


彼女の荷物を、足元に投げつけた
蒼白して、は荷物を持つと踵を返した
扉の閉まる音、パタパタと階段を下りる音が次第に遠のいて行った

ジェイクは、テーブルをなぎ倒し、椅子を蹴飛ばす
部屋の中には彼の荒い呼吸音だけが響く


「……っクソ!」


荒々しくベッドに腰掛けた

数時間前まで、昨日まではあんなにも幸せだったのに
ジェイクの瞼の裏に、泣き顔のが表れる
それを振り払うように、布団を殴った


***


気がつけば、朝日が部屋にさんさんと入ってくる
一睡もしなかったジェイクは、ぼうっとする頭を覚醒させるため、シャワーを浴びに行く

熱いシャワーを浴びれば、徐々に意識が戻ってきた
やや冷静になると、昨晩が何かを言おうとしたのを、思い出す

どうして、自分に近づいてきたのか
好きだと言った言葉も、全て嘘だったのか

ひとりで考える事に答えなんて出る筈もなくて、ジェイクはシャワーのコックを捻り湯を止めた
風呂から出ても、迎えてくれる者はもういない
それがひどく寂しくて、堪らなかった

もともと、ひとりで生きてきた
母親を失ってからは、金だけのために生きていて
それを救ってくれたのは、シェリーだった
そして、また誰かと生きていきたいと思わせてくれたのは、紛れもなく


また、ひとりになる


それでいい、そうやって生きてきたのだから
言い聞かせるのに、心は頷いてくれない


「……どうしろってんだよ」


心と頭と体が、バラバラになっていく感覚

を求めてしまう心と、裏切られたと傷ついた心
父親が愛し、父親を愛した女
結局、自分の中に彼を見ていたのか? と
全てを知るを追いだしたのは、間違いなく自分で

ジェイクは思考をやめるように、ベッドに体を預けた





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