小松が厨房で腕を振っている間、は集まった旧友たちに今までの事の経緯を話した
自分の体の事、どうして姿を消したか、グルメ界での事、そして今の自分がしている事
彼女が話している間、誰も口を開く事はなかった
全てを話し終えたは、他の面々の反応を恐る恐る待った

みな、何かを考えるような表情をしている
最初に口を開いたのは、リンだった

「でも、なんでしょ?」

「リン……」

「ウチは昔のも今のも変わんないし!」

その言葉に、は返事ができなかった
見兼ねたココが、優しく呟く

「確かにから発せられている電磁波は、普通の人やボクらと少し違うけど……君はボクの知っているだよ」

ああ、どうしよう、と
今まで我慢してきたものが、溢れてしまいそうだ、とは思う
一生懸命堪えるも、ふわりと自分に触れるそれに気がつく
サニーを見れば、真剣な表情で彼女を見ていた

「オレの触覚に気がつくのも変わってねえし」

ゼブラはゼブラなりにの話を理解したようだが、相変わらず裂けた頬から涎が流れていた
トリコを見れば「大丈夫だって言ったろ?」と笑顔を向けられた

昔、自分を受け入れてくれた人たちは、今もこうして自分を迎え入れてくれる
どうしようもないくらいの幸福感に包まれて、ついにの瞳からポロリと涙が零れた
それを皮切りに、次から次へと涙が溢れてくる
シュウが心配そうに、そっとハンカチを差し出した

「……本当は、すごい、怖かったの」

みんなと違う自分
それを知られてしまったら、拒否されるのではないか
奇異や軽蔑の目で見られるのではないか

大切な人たちだからこそ、余計に怖かった
けれど、やはり自分が信じた人たちは、変わらなかった

「ごめんね……みんな」

泣きながらも笑って顔を上げたに、トリコたちは安心したようにつられて笑った
するとタイミングを見計らったかのように、小松がカートを引いてやってくる

「お待たせしました! 料理、できましたよ! ってさん泣いてませんか?!」

「小松さん……大丈夫ですよ」

「もう、小松くんでいいし敬語もいらないって言ったじゃないですか!」

自らも料理を給仕しながら、に言う
それを聞いては「そうだった」と苦笑いになる

様々な料理が並び、それぞれがフォークやナイフを構える
そしてとシュウの前だけに、センチュリースープが出された

「なっ、おま、それ飲むつもりか?!」

「そうだよサニー、私これすごい楽しみにしてたんだもん」

「前のつくしくない顔なんて見たくねえ!」

ギャーギャーと喚くサニーを放っておいて、それぞれ「いただきます」と手を合わせた
トリコとゼブラが勢いよく料理を掻き込み、ココは作法通りに食べ始める
リンは早速デザートから手を出し、とシュウはスープにスプーンを入れた

「本当にオーロラが出るんですね」

「綺麗……」

す、と一口、口に運ぶ
やってしまった、とサニーが手の平を額につけた

シュウは咄嗟に顔を隠したが、は微笑んでいる
周りはそれが不思議でならなかった

「すごい美味しい! こんなスープ、今まで飲んだ事ないよ!」

「そ、そうですね……」

お前、なんで顔……」

「ふふ、秘密」

トリコが聞いてみるも、は微笑みながらスープを飲む
シュウもぱっと顔を上げ飲んでは隠す、という行為を繰り返している
そっと小松に「とても、美味しいです」と顔を隠したまま、言った

「あ、さん、もしかして味の分析をしてるから顔がだらしなくならないんですか?」

「小松くんにはバレちゃったか」

「なんだよお前、ズリィぞそれ」

トリコが「お前のだらしない顔見たかったのによ」と肉に齧り付きながら不貞腐れる

「本当に、何が入ってるか分かるんですか?」

「うん。なんならいくつか当ててみようか?」

「はい!」

「あんみつ鶏に、梅玉ねぎ、あられこしょう、松茸貝、ステーキ昆布に雪鰹節……ただ、私も食べた事のない食材もいくつか入っているみたい」

「すすすっすごいです! 全部正解です!」

小松がキラキラした表情で、を見る
それに照れたは、ますますスープを啜った


その日の宴は、いつまでも笑顔が絶えずに終わったという