私の好きな人は、ぶっきら棒で何考えてるか分かんなくて。
それでいていつだって孤独な人。私が隣にいても、どこか寂しそうな人。
きっと、それは過去に背負った傷のせいなのだろうけど
それすら癒せない私は、時々隣にいてもいいのだろうか、と悩む時がある。

だけど、そんな私なのに晋助は、目に見えないけど、たくさんの愛情と優しさをくれる。
他の人からしてみれば、どこに優しさや愛情があるかなんて、分からないかもしれないけど、私には充分伝わっている。

たくさんの人から怖がられてて、同時にたくさんの人から憧れを抱かれている。
そんなに大きい人の恋人が私なんかでいいのでしょうか。

私が何かしくじった時も「馬鹿」って言いながら、優しく頭を撫でてくれる。
泣きながら帰ってくれば「泣くんじゃねぇ」と、強く言いつつも抱き締めてくれる。
けれど、その大きな手に素直に甘えたことはなくて。

だって、甘えてしまったら、最後。私はきっと彼から離れられなくなってしまうから。

依存してしまう、ただのお荷物になってしまう。いつか、重たく思われてしまう。
そう考えるだけで、怖くて、悲しくて。だから甘える事をためらってしまう。

なのに、晋助は。そう不安に駆られている時に一番、優しくするから。
普段、皮肉な笑いしか零さないその頬に、珍しく笑みが浮かんでいる。
「どうした? 何が心配だ?」ああ、そんな優しい声で触れないで。

「嘘なんか吐くじゃねぇ」って。やっぱり晋助にはなんでも、お見通しで。
だったら、ねえ。どうかこの私の、くだらない不安さえも見通して
そして、どうか私をあなたに甘えさせて下さい。





俺の女は、意地っ張りで素直じゃなくて、とんでもなく不器用で、しかもすぐに泣き出す、とんでもねぇ女。
なのにそれを、かったるいと思わせない、ずっと隣に置いておきたいと思わせるのはコイツだけだからで。
自分もずいぶん酔狂な奴に成り下がったな、と思う。

他人に何かを与えたって、自分に得はないと思っていた、そんな俺に
くだらない愛を教え込んだのも、愛しむ事を教えたのも全部こいつで。
俺のちっぽけで小さな愛とか優しさは、全部こいつだけに向けられてんだ。

何も知らない、純粋過ぎる、それが故に危な過ぎて俺が触れたら穢れてしまいそうな
こいつの男が俺に、務まっているのか。時々柄にもなく不安になる時がある。

たとえ失敗したって「馬鹿」の一言で、いつの間にコイツの頭を撫でている。
甘い慰めの言葉なんて知らねぇから俺は強く「泣くんじゃねぇ」としか言えない。
だから代わりに体を貸す。けれど、それにこいつが素直に抱きついた事は一度もなくて。

どうせ、またくだらない事で躊躇してんだろうが。お前の全て受け止めるくらいの余裕はあるって言うのに。

依存されたとしても、ただの荷物になろうと俺はこいつを手放すつもりもねぇし、永遠に自由になんてさせねぇ。
だから、素直に頼ればいい。素直に甘えればいい。

そうして不安に襲われるこいつのそれを、少しでも拭ってやれれば。
そう思って精一杯の優しさで接する。ああ、こんな事俺にさせられるのは、この世でこいつだけだ。
「どうした? 何が心配だ?」頬に触れれば、瞳を泳がせる否定する。

「嘘なんか吐くんじゃねぇ」と。大体は見えてるんだ。こいつの胸ん中は。
けど、どうしても奥底だけは見えない。それがもどかしくて。
だから俺は、もう一度を手繰り寄せるしかねぇんだ。





甘えたいのに甘えられない/甘えていいですか





Title by リライト「君で変わっていく10のお題」