空の色が藍色で、キラキラ光る星は白い。
雲ひとつない、澄みきった藍色の空に輝く満天の星と
一つ、三日月に寄り添うようにして、一際輝く大きな星。
ハァ、と吐いた息が白くてもう本格的に冬なんだと思う。

巻いたマフラーは少しチクチクして、羽織っているコートから出る素肌の部分が冷たくなって、指先なんてもう感覚がない。
それでも、このままこの藍色のカーテンを見ていたくて、首が痛むのも構わずに空を見上げてる。


「一人で見るのもいいけどさ……やっぱりこういうのは人と共有するもんだよなぁ……」


ぽっかりと浮かぶ三日月に投げた言葉は、白い吐息になって次第に消えて
電線が邪魔だから、一歩後ろに後退した。


?」

「あれ、近藤さん?」


声が聞こえて、振り返れば愛しい人。
この季節に隊服のみのその姿は、見てるこっちにも寒さを運ぶ。
赤いマフラーをグルグル巻きにして、鼻も真っ赤で。
どこかで聞いた事のある唄を思い出す。
そう言えば、あの曲もそろそろ出番だな、と。


「こんな寒い中一人で何してんの?」

「んー、星空観察」

らしい」


笑いながら隣に立つ近藤さんも、私と同じように首を後ろに傾けて夜空を見上げる。
「あー、たくさん光ってるなァー」と、子供みたく笑う顔はいつ見ても大好きだ。


「そう言えば近藤さんは何してたの?」

「俺?」

「うん」


お互い顔は動かさずに声を出し、コンタクト。
「夜の見廻り」と呟いた近藤さん。


「じゃあ、たまたま通りかかったんだね」

「ううん、たまたまじゃない」


え? と思って隣の近藤さんを見ると
寒さのせいじゃなさそう、頬の赤みがさっきより増してて。


の声がして……気になったからこっち通ったんだ。そしたら、本当にがいて」


ビックリした、と笑って私を見る。
私も、ビックリした。


「私も……三日月が近藤さんみたいで……呟いただけなのに」


私の声が聞こえてた。
遠く、離れていた近藤さんに
小さな、小さな呟いた言葉。

目を丸くして、すぐにフニャッとちょっとだらしない笑顔になる。


「なんか、嬉しいな」

「へ?」

の声が、遠くにいた俺に聞こえて今日もこうやって会えたんだ」


大きくてゴツくて、温かい手の平が頭を行き来して
くすぐったいような、どこかもどかしい気持ちが湧いてきた。

どんな小さな声でも、あなたは聞き逃さないでいてくれる。





Title by 恋かもしれない35題