真島さんはいつでも強くて、格好よくて、それでいて時々少し弱さを見せる。
たとえばこうして二人でいる時、私を抱えて離さないでいる。
どこにも行かないのに、子犬を連想させる瞳で私を見下ろす。
そうして頭を撫でて、色んな所にキスを落とす。


「あかんなあ」

「何がですか?」

「こないなところ、組の奴らに見せられへんわ」


私の肩に顔を埋めて、そうもらす。
私だけ、という事が心を温かくさせる。横を向けば、さらさらの黒髪が目に入った。
なんとなく、彼の頭を撫でてみる。
少しの間黙っていて、それからちらりと目が合う。


「何しとんねん」

「いや、なんとなく」

「俺は犬か」

「狂犬でしょ?」


ほな噛みつくで、と歯をかちかちとさせて、笑った。
笑っているのにどうしてか、真島さんの表情の裏に不安が蠢いてるように思えてならなかった。

住んでいる世界が違う。年の差はどうやったって埋まらない。
それでもこうして私達は出会って、恋をして、一緒にいる。
不安はいつでもつきまとうけれど、それでも私は彼の隣に幸せを見出している。
真島さんも、同じなんだろうか。


「真島さん」

「ん?」

「大好き」


普段は鋭い目がまんまるに見開かれて、それからゆっくりと細くなった。
俺もやで、と体を縫い止める腕の力が、少し強くなる。


「何があっても、私は真島さんを置いてどこにも行かないから」

「そうか」

「真島さんが必要としてくれるなら、ずっと隣にいるよ」


照れくさくて、彼の腕を握った。私の手の上に、真島さんの手が重なる。


「なんでそない嬉しくなる事ばっかり言うねん」

「……真島さんが、不安そうだったから」


いつでもこうして抱きしめてくれて、手を引いてくれる。
そんな彼に、私は少しでも返せているんだろうか。
溢れてしまいそうになるこの気持ちを、ほんの少しでも伝えられたらいいのに。
こんなにも心の中が、真島さんでいっぱいなんだって、見せられたらいいのに。


「……

「んー?」

「愛してんで」

「……うん、私も」


わずかに震える手も、温かいぬくもりも、全部愛おしい。










「どうしてかな、が止まらないんだ」「それはきっと幸せだから、だよ」











Title by レイラの初恋