子どもの頃は、当たり前にサンタクロースがいるものだと思っていた。
でも、気がつけばそれはおとぎ話みたいなものだと知って
そういう風に、大人になっていった。


今年のクリスマスは、初めてアサガオで過ごした。
みんなで飾りつけをして、遥ちゃんと二人でご馳走を作って
そのご馳走をみんなで囲んで、楽しくクリスマスパーティーをした。

夜、子ども達が寝静まったのを確認して、桐生さんと二人、それぞれの枕元にプレゼントを置いた。
それから、二人で縁側に座って、お酒を飲んでいた。


「すまねぇな、こんな遅くまで手伝わせちまって」

「大丈夫です。楽しかったです、サンタさんの役」


可愛い寝顔を見ながら、サンタクロースはこんな気持ちでプレゼントを配っているんだと思った。


「明日の朝、楽しみですね」

「ああ」


子ども達はどれくらい顔を輝かせて、報告に来るんだろうか。
どうやら桐生さんも同じ事を考えてたらしくて、その横顔は優しく綻んでいた。


「子どもの頃から憧れてたんです、クリスマスパーティー」

「やった事なかったのか?」

「はい。クリスマスの日も普通のご飯を食べて、寝るだけでした。プレゼントはちゃんとありましたけど」


パーティーをしなくても、サンタさんは来てくれるんだと嬉しかった。


「だからこうして、飾りつけをして、ご馳走を食べるの、すごい楽しかったんです」


持ち手のついたチキン、オードブル、サンドイッチ、ビーフシチュー、大きなケーキ。
カラフルでキラキラした飾り。大きなクリスマスツリーにオーナメントを飾っていく。
みんなで歌を歌ったり、ゲームをやったり、そんなパーティーがずっとしたかった。


「桐生さんのおかげで、やりたかった事、できました」

「俺のおかげじゃねえさ」

「ううん、桐生さんは私のサンタさんだよ」


いつだって、新しい気持ちをくれる。
嬉しい事、悲しい事、全ての気持ちを与えてくれる。


「なら、も俺のサンタクロースだな」

「え?」

「俺にたくさんの愛情をくれるだろ?」

「は、はい……」


近づく距離、肩と肩が触れ合う。
それから、距離がゼロになる。


「ん……」

「……これからは、俺だけのサンタでいてくれ」

「はい」


愛しい人からのお願いは、断れる筈がない。









子供のころの屈託ないを語って










Title by Fortune Fate「ふたりの聖夜に5題」