その硬そうで本当は柔らかい髪に触れた時とか、寝ている時の顔とか。
お酒飲んで機嫌よさそうに笑うところとか、本当はいい奴なのに悪人みたいににやり、って笑うところとか。
全部全部ゾロだから格好よく見えて、すごく好きで、それでもっと見たくなる。

狭い船の中に八人、ギュウギュウに詰めて笑い合う生活にも慣れて
それが当たり前になって、もうこれ以外の生活なんて考えられないね、なんて、隣で寝てるゾロにそっと声をかけるけど、
今まで返事が返ってきた事は一回もない。それがゾロだから、そこがまたいいなんて思う辺り
ナミの言う通り、私はどうかしてるのかもしれない。

でも、正直な気持ちをこの時だけ言ってしまうと、この生活を手放せないのはきっとゾロがいるからで。
もしも、もしも本当に世界が引っくり返ったり、ゾロが死ぬ、なんて事があったら、この船を降りちゃうよ。

きっと降りたら後悔もするし、泣くし、すごくすごく、それこそ死んじゃうくらい辛いかもしれないけど。
それ以上にきっと、私は弱いからゾロの面影がたくさん残ったみんなのいる船には、いられない。いたくない

だって私の世界はゾロと私と私の夢でできてる。自惚れでも過剰な思い込みでもなければ、それは事実で。紛れもない本当で。
確かにルフィもナミもウソップもサンジもチョッパーもロビンも。私の世界でみんな笑っているけれど。この世界で一番の宝物だけれども。
ゾロはもっと特別。

順番なんてつけられない。いるのが当たり前。失くしちゃいけない大切過ぎるもの。
そう言ったらゾロは何て言うかな? 笑うのかな。それとも照れるかな。

ゾロを知る前の世界も楽しかったけど、今、ゾロを知ったこっちの世界の方が
何倍も、何百倍も楽しいし幸せだし、ずっと続いて欲しいなって思うよ。

私の望む一番理想の世界は、ゾロがいて、私がいて、それからみんなもいる楽しくて幸せで優しい世界。
でも、もしゾロ一人が欠けたらダメなんだ。我侭で、依存してて、本当に。
でもルフィはそんな私を「すごいな」って言ってくれた。そんな船長も、私は大好き。





おれなんかより遥かに小さくて柔らかい体を抱き締めた時や、おれの名前を呼んで笑った顔とか、本当は怖いくせに無理して敵船に向う横顔。
泣きながらおれの心配をするところも。もうとにかく全部が、壊したいくらいに、だからこそ愛おしくて。
ずっと隣にいてほしい、ずっと守ってやりたい。そう思う。

小さい船に多過ぎる人数で海を渡る。一人でいる時ほど退屈もしなければ、大変な事もない。
船長が船長なだけにそれ相応の事はついてくるが、それも一興。
鍛錬をしている最中に、耳に入ってくるのはしゃぐ声を聞きながら、そんな事を思う。
一度、それらしい事をコックにぼやいたらやけに珍しいものを見るような目で見てきやがった。だからとりあえずコックの眉毛をいつものように馬鹿にした。

一番大切なものはなんだ? と聞かれた時、最近じゃ素直に仲間や刀、野望と言えるか怪しくなってきた。
素直にその言葉が出てくる前にどうしても、の顔がチラつく。
が、この船からいなくなった時、果たしておれはそのまま船にいられるかも怪しい。

親友に誓った夢は、今でもおれの生きる目標なのは変わらない。そのために命を投げ出す事に違和感もない。仲間も無論。
けれど、いざを目の前にした時、の面影を感じた時、その時もおれは今のおれでいられるか、正直見当もつかない。

いつの間にかはおれの世界になっていて。野望にも、鍛錬にも、何もかもで溢れている。
今のおれの存在理由は夢と仲間とだ。仲間とごっちゃになんて、できないし、したくもない。
かと言ってのために夢を捨てるか? と聞かれて頷く事はしないだろう。逆に夢のためにを殺せ、と言われたらそれもできないだろう。

こんなにも弱くなったおれを、親友や仲間はどう思うのだろう。
けれど、それ程までにはおれの中で大きくなり過ぎた。そう言ったらお前は笑うか? それとも呆れるか?

夢だけのために、危険に身を投じた日々を、くだらないなんて笑う奴は容赦なく斬るが
と過ごすようになったこの日々もまた、その時と同等、それ以上の価値がある。

おれの望む最高の世界は、がいて、おれがいて、仲間達がいる世界。
一人が欠けた時点で崩れてしまうような、そんな危ない理想郷。
自分勝手で、横暴で、自己中心的なものかもしれないが。それでも構わない、そう思われても平気だと思えるようになったのは、確かにのおかげだ。










もう、君が居ないといられない











TItle by リライト「君で変わっていく10のお題」