大きなオレンジ色のかぼちゃをくり抜いて作るジャックランタン。
中にろうそくを入れれば、ハロウィン限定のおしゃれなランプになる。
ルフィ、ウソップ、チョッパーと一緒に何個も作った。
くり抜いた中身は、サンジがおいしいかぼちゃ料理にしてくれるんだろう。
オレンジ色と黒で塗ったカゴを持って、船の中を練り歩く。
最初に出会ったのは鍛練中のゾロだった。
「ゾーロ、トリックオアトリート!」
「今年も、もうそんな時期か」
ほらよ、と投げられたのはいくつものキャンディが入った、可愛い袋だった。
去年、ゾロは用意してなくて私達からの執拗ないたずらにあっていた。そこから学習したのだろう。
「ありがと。はいこれ」
かぼちゃを練り込んで作った、特製かぼちゃクッキーを渡す。
鍛練中で、おそらく喉が渇いているであろうゾロに渡すのは少し気が引けたけど
今年のお菓子はこれなのだから、しょうがない。
意外にもゾロは喜んでくれて、その場で一口食べてくれた。
「よくできてるな。コックよりうめェんじゃねェか?」と頭を撫でてくれる。
私は満足して、次のターゲットのもとに向かった。
ナミとロビンは、パラソルの下でくつろいでいた。
近づいて、ナミの肩に抱き着いて、トリックオアトリート! と言う。
「そろそろ来る頃だと思ってたわ。はい」
「私からもトリートよ」
ナミは自家製蜜柑で作られたゼリー、ロビンは紅茶の香りが芳しいシフォンケーキだった。
二人ともサンジにキッチンを借りて作ってくれたらしい。
「もーう二人とも大好き! 私からもこれ!」
クッキーの包みを、二人に渡す。ジャックランタンの形だったり、ゴーストの形をしているそれを二人は褒めてくれた。
「器用に象ってあるわね! 味も保障できる?」
「もちろん! たくさん試作したからね」
「ふふ、ありがとう」
頬に軽くキスをして、今度はお騒がせ三人組の所へに行く。
釣りをしていた三人は、すでにナミやロビンに貰ったお菓子を食べ尽くしていた。
ルフィが「お、! やっと来たかぁ〜!」と手招きをする。
「トリックオアトリートだ!」
「はい。ルフィのはこれ」
一番大きいかぼちゃの形をしたクッキーを渡す。
ルフィは目を輝かせて受け取り、その場で齧りつく。
「うんめェ〜!!」
「ルフィだけズリィぞ! 、おれの分は?!」
「ちゃんとあるよ」
手を伸ばしてくるチョッパーの蹄に、包みを渡す。
にしし、と顔が緩んで。それが可愛くて私は思わずチョッパーを抱きしめた。
「おいおいおい、。おれ様のことを忘れてねえか?」
「忘れてないよー。はい」
チョッパーを抱きしめたまま、ウソップにも渡す。
ありがとな! と言うと、早速食べ始める。
「さてと、最後の所に行ってこようかな」
チョッパーをおろして、私はダイニングへと向かう。
ダイニングでは、パンプキンパイの焼けるいい匂いが満ちていた。
その中でフランキーとブルックがお茶をしていて。二人にクッキーを渡す。
「ヨホホホホ、かぼちゃクッキーですか! ありがとうございます。ついでにパンツ見せていただいてもよろしいですか?」
「見せないよ」
「ヨホホー!」
ポロポロと骨の隙間からクッキーが零れ落ちる。ブルックは零れたクッキーのかけらも残さず食べてくれた。
「フランキーのはちょっと固めにしておいたよ」
「おう! ありがとな!」
大きくて強い力が入りやすいフランキーのために、クッキーは少し固くしてみた。
どうやら功を奏したみたいで、フランキーにあげたクッキーは崩れる事なく彼の口に運ばれていった。
キッチンで、今日の夜のご馳走を準備しているサンジに近づく。
トリックオアトリート、と耳元で囁く」
「いっ!? ちゃん……おどかさないでくれよ」
「へへ、びっくりした?」
「もちろん。お菓子はもうちょっと待っててくれ。パイがそろそろ焼き上がるから」
そうしたら、みんなで食べよう。甘い笑顔でとろけるように答えてくれる。
私は一番可愛くラッピングしたクッキーの包みを出して、サンジに差し出す。
「おれにもくれるのかい?」
「うん」
「ありがとうな」
さらりと金糸が揺れる。垂れ下がった眉尻がいとおしい。
私はキョロキョロと辺りを見回して、それからサンジに少し屈んでもらう。
「もうひとつあるの。貰ってくれる?」
「うん、なんだい?」
そっと、サンジの薄い唇に自分の唇を重ねた。
刹那で離れたけれども、しっかりとその感触は残っていて。
お互い顔を赤くして、笑い合った。
「これは悪戯なのかい?」
「違うよ」
「あー!! サンジだけズリィぞ!」
いつの間にか、ルフィ達がダイニングに来ていて。その後ろからゾロ、ナミ、ロビンも入ってくる。
私達は顔を合わせて微笑んで、それからまたキスをした。
終わらないhurly-burly
Title by Fortune Fate「ハロウィン幻想5題」