「ああ! 今日もなんて美しさなんだナミすわぁぁぁん、ロビンちゅわぁぁぁん!」

目の前には可憐に笑顔を振りまくふたり。そして背中に感じるジトッとした視線
振り返れば今日も今日とて、クルーであり恋人でもあるの、機嫌の悪そうな顔
麗しき美女ふたりは笑いながら「本当のお姫様がお待ちかねみたいよ?」とつれない一言
本日のスイーツを彼女たちの前に置いてから、の方へと足を向ける

おれの顔を見ると、ハッとした表情になってから慌てて逃げ出す
トレー片手におれも後を追って走り出した



蜜柑畑の隅でうずくまる後ろ姿を見つける
そっと近づいて「なあ」と声をかければ、いかにも不満げな表情をしたがこちらを向く
おれを見上げる瞳に、薄い膜が張っていた



「……サンジのばか」



唇を尖らせて、ふいっとまたそっぽを向いてしまう
屈んでトレーを置き、もう一歩彼女に近づいた


「来ないでよ」

「いやだね」

「ナミとロビンがいるじゃんか。そっちに行けばいいでしょ」


それが本心ではなく虚勢だって事に気がついたのは、いつからだろう
歩みを止めれば焦ったように振り向いて、おれと目が合うと気まずそうにまた目線を戻した


彼女は知らない

その一挙一動がどれだけおれの心臓を、忙しなくさせるか
どんなレディでも丁重にもてなし愛するのが心情のおれが、あまりにも愛しすぎてどうしていいか分からない事も
あのクソマリモにすら馬鹿にされる程なのに、肝心のは気がついていない


手の届く範囲で、膝をつく
そっと手をのばして細い肩に触れれば、少しだけ揺れる



「サンジの浮気者」

「浮気なんてしてないだろ」

「変態」

「……それは否定できねェな」



少し茶化したつもりなのに、それでも見える横顔はまだ沈んだままで
こんな顔をさせたい気なんて、塵程にもないのに
おれは何をやっているんだろうか


「……どうせ私はナミほど可愛くもないし、ロビンみたいにおしとやかじゃないもんね」


そう言って膝の間に顔を埋めるの肩が、僅かに震えていた


「おれは……」


ルフィ達と馬鹿やって笑う顔や、強い敵に出くわした時に凛とする表情や
おれの隣で嬉しそうに、おれの作った料理を食べる彼女に惹かれたんだ

他にもいくらだって彼女の好きなところ、惹かれたところを言えるけれど
今の落ち込んでいるにそれは届きそうにない
結局どうしていいか分からないおれは、彼女を抱きしめて叫んだ





大好きなんだよコンチクショウ!





title by 嗚呼-argh