広く澄み渡る青空が、眩しい
ひとりの老人が一枚の写真を持ち、墓の前に立っている


「沙織、祐樹君……君達の娘は、賢く美しく育ったよ」


その写真には、ウェディングドレスを着たと、袴ではなく白のタキシードを着た五ェ門
彼はを抱きかかえ、珍しい程に大きく笑っている
その後ろでは、ルパンや次元、そして不二子が銭形に追われつつも笑顔で写真に写っている


「時々、手紙が来るんだよ。たいていは沙織、お前みたいに発明品の成果を書いてくる」


老人は、写真を胸にしまうと持っていた花束を墓に置く


「……上から、あの子達を見守ってやってくれ」





とあるニューヨークの市場で、その場にそぐわない袴姿の男が辺りを見回している
誰かを探すように、人の間をしっかりと見つめながら


「五ェ門!」


声のする方に振り向けば、だいぶ遠くの方で手招きをしている女性
その両手には大きな紙袋が抱えられていた


!」

「ごめんごめん。美味しそうなトマト見つけたから買ってたんだ」


紙袋から一つのトマトを出すと、彼女はそれを彼に手渡す
五ェ門は、微笑を落とすとそっと紙袋を受け取った
そこにトマトを戻し、片手をの空いた手の平に持っていく


「少し、寄りたい所があるのだが……いいか?」

「うん、どこに行くの?」

「ついてくれば分かる」


手を引かれ、は五ェ門の横を歩く

人の間を縫い市場から離れる
しばらく歩くと、人のいない裏路地を通り始めた
はどこに連れて行かれるのか、期待を膨らませて

途中、すれ違った子猫が二人を見上げていた

裏路地を抜け、いくつもの道を曲がり
新たな路地に入った頃、五ェ門が「そろそろだ」と呟いた


「五ェ門、一体どこに……」


路地を抜け、の目に入った景色

それはどこまでも広く続く大海原
白い海岸と、周りを囲むのは色とりどりの花と深い緑が覆い茂る樹木
真上に浮ぶ太陽が、キラキラと波を反射させていた


「すごい……綺麗な景色……でも、どうしてこの場所、知ってたの?」

「朝の修行の帰りに見つけたのだ」

「どうりでこの前、朝の修行の帰りが遅かった訳だ」


苦笑するは、また海へと視線を投げる

潮風が、二人の髪を通り過ぎていく
は目に入りそうな髪を指で払う

その薬指には、銀色に光るリングが嵌められていて
紙袋を抱える五ェ門の薬指にも、同じ物が光っている


「ふたりで見ると、もっと綺麗に見えるね」


五ェ門を見上げ、笑いかけるに彼は目を丸くした
それから、ひとつ笑うと「そうだな」と返しその手の平を硬く繋いだ


君にだけ、伝えたい景色





















君と一緒に、いつまでも見ていたい





Happy End