私からルパンへの愛情は、恋愛の愛情
だけど、ルパンからの溢れるくらいくれる愛情は、恋愛の愛情じゃない
そんな事知ってる。彼が恋愛の愛情を注ぐのは
どんなに浮気をしたって。どんなにいい女がルパンを好きになっても
世界でただ一人だから

なんにも、いらないんだよ
それこそキラキラ光る綺麗な宝石も
何億という価値がつく、絵画や作品も
何もいらないから私のものになって欲しい

私にだけ、その愛情を注いで欲しい

どんなに一番近くにいても、傍にいても、隣にいても
ルパンの目に写る私には、恋愛の愛情は見つけられない

キスをして、裸になって抱き合って
そんな恋人が普通にする事をして欲しいの
どんなに傍にいたって、触れられないのなら
いらないよ。辛いだけだから


脱衣所の曇った鏡に映る、間抜けな自分
無表情で蒼白な顔は、お世辞にも可愛いなんて言えない

あの人と比べると、薄い胸
あの人の肌は透き通るように白くて綺麗だけど
私の肌は、死んだ魚の腹か病人みたいだ
肌色の白じゃない。青の白

溜息を一つ零して、一度瞼を下ろした
やらなきゃいけない事が溜まっている


ー、大丈夫かぁ?」

「うん、平気」


扉の向こうから聞こえるルパンの声に返事をした
本当は平気でもなんでもないのに

間抜けな顔を冷水で締める
真っ白なタオルで水分を拭き取って、扉を開けた
白いシングルのベッドと、チェストしかない部屋は
このアジトでの部屋

ベッドに腰掛けたルパンが、ようやくホッとした様な顔で私を見た


「傷、痛むか?」

「ううん」


首に巻かれた包帯が邪魔だ

今回盗みに入った際に、たまたま他の組織とかぶってしまい
その時、一番弱い私は人質に取られて
挙句首元にあったナイフに、浅くだけれども皮膚が切られた

結局、咄嗟に私が相手の腕を噛んで抜け出し
隙をつかれた相手は、ルパンのワルサーに撃たれた


平気だと言ったのに、ルパンはすごく心配した
心配したからこそ、すぐアジトに引き戻ってこうして手当てをされた
窓から見える外の風景は、夜
他の二人は今、何をしているんだろう

ベッドに近づくと、ルパンが立ち上がった
「今日はもう寝るんだ。疲れただろ?」と
優しい声で優しい表情をして、私の顔を見る

それから、包帯の上から首をなぞる
優しく、優しく。宝物を盗む時の慎重さよりも、もっと優しく


「……まだ寝られない」

「じゃあ眠れるまで、俺が隣にいてやっからよ」

「本当?」

「ホントホント。さ、ベッドに入った入った」


薄い毛布を捲って、私をベッドの中に滑り込ませるルパン
肩まで上げられる毛布
右手を隙間から出した


「手、繋いでて」

「お安い御用だぜ」


壊れそうな丸椅子に腰掛けて、ルパンは笑う
ゆっくりと瞼を下ろして、寝る準備を


「ルパン」

「なんだい?」

「――愛してるよ」


返事はなかった。いつもの事だ
だけど、手を握ってくれているその手の平が、少しだけ強張った事は分かって
瞼を下ろしたまま、笑った


「我侭を言えば不二子さんへの愛情を私に注いで欲しいけど、それがダメなのは知ってるから」

「……

「だからせめて、さ。私の不毛な、ルパンへの愛情は受け取ってよ」


目を瞑ったまま、ルパンの指に自分の指を絡ませた
拒否される事なく、繋がれたままの手の平達
泣きたいのを堪えて、もう黙る事にする

うつらうつらし始めた意識を手放す頃には
きっとルパンはこの部屋を出て行くだろう





完全に眠りに落ちたの唇に、軽いキスを落とし
「ごめんな」と呟いたルパンを知る者は誰もいない










Maybe,also.