私だったら、あなたを騙したり悲しませたり困らせたりしないのに
いつだってどこだって、あなたが一番で
私はあなたの為だったら、死さえも厭わないのに
そんな女だからこそ、あなたは私だけを囲わないなんて事
本当はずっと前から―あなたに、惹かれたその瞬間から―知っていた


はいつだって綺麗だんなぁ」

「本当に?」

「ああ、俺っち嘘は言わないよぉ?」


肩に回された手がまだ冷たい
二人並んで、私の部屋の小さなソファに腰掛けている

十二月の澄み切った夜の空の下。帰宅した私の目に入ったのは
玄関の前に立って、私に手を振るルパンだった

私の髪の一総を掬って、口づけるルパンに眩暈を覚える
ちらりと上目遣い。そっと顔をあげて今度は唇に

そのまま、ゆっくりと押し倒される


「ねえ、ルパン」

「なんだい?」

「……なんでも、ない」


秘密は好きじゃないなぁ、なんて笑いながら慣れた手つきで服を脱がしていく
一枚一枚剥がされていく度に、頭を過ぎるのは
こうされるのは、私で何人目? そうしながら、あなたは誰を見ているの?
言えない言葉は涙になって目に薄い膜を張っていく

与えられる所有印は、私をあなたに縛りつけておく事が出来るけど
あなたを私に縛りつけておけるものは、きっとこの世のどこを探したって見つからないんだろう


「っん……る、ぱん…」

「俺といるのに、俺以外のことなんて考えちゃ嫌だぜ?」


どうして、どうして、どうして
あなたは私だけじゃないのに。あなたには本当の人がいるのに
何故そんな痛切そうな声をするの
これ以上、私をどうしたいの

どうしてそんな泣きそうな顔で笑うの

暗い部屋の中で感じるのは、彼の温かくなった手の平と吐息


「ルパン、ねえ、ルパン…っ」

?」

「……嘘でも、いいからっ……私だけって、言って……?」










一夜限りと貴方が笑った(どうして私達はこんなにが得意になったんだろう)










本当は今日だけなんかじゃ嫌だよ。それすら言えない私は臆病者
(本当は最近、いつだって君のことばかり考えている事は秘密にしておく)




Title by 207β