ちゃぷちゃぷと、ふたりの耳に心地いい波音が届く
開け放った窓はまるで絵画のように、窓枠の中にいくつもの花火が打ちあがる

「まさかルパン、屋形船を貸し切ってくれるなんてね」

団扇を扇ぎながら、が五エ門に言う
五エ門は、のすぐ後ろで彼女と同じように花火を見ていた
彼女の言葉に、五エ門の表情が難しくなる

「常々思うが、の言葉にルパンは過剰に反応しすぎだ」

「そうかな」

くすくすと笑うのに合わせて、の項にかかっている髪が揺れた
彼女の姿はいつもとは違い、黒地に赤や桃色の花が咲いた浴衣を着ている
髪も結い上げ、飾りのついた簪を指している
五エ門も普段の袴ではなく濃紺の浴衣だ

どおん、と大きな音が響いた
夜空と水面に、色取り取りの花が咲く
ゆったりと揺れる船の上、ふたりはそっと寄り添い、花火を見上げていた

船の中は電灯はついておらず、暗い
絶え間なく打ち上げられる花火によって、薄らと互いの顔が分かる程度に照らされる

「こうやってゆっくり花火を見るの、何年ぶりだろう」

「拙者もだ」

の目は、次々と打ち上がる花火に釘付けだ
五エ門は意識を花火に向けようとしはしているものの、どうしても彼女の方に行ってしまう
相思相愛のふたり、特に五エ門はのことが愛おし過ぎて
今日の今日まで、所謂体の関係を持った事がないのだ

五エ門は船に来る前、ルパンに着付けをされている時にこう言われた

『せっかく俺っちが最高の船を用意したんだ、男になれよぉ?』

『なっ、なにを言うか! 拙者たちは清い交際をだな』

『今更そんな事言ってるなよ。うかうかしてると、、取られちまうぜ?』

その言葉に、何も言えなくなってしまった五エ門は、顔を赤くするばかりだった


夜空に咲く花の光が、の横顔を照らす
ふたりの距離は至極近い。五エ門は己の心臓が早鐘を打っているのを感じていた

五エ門は考えた
もし今、この手を伸ばし彼女に触れられたら
けれども、もしその手を拒否されてしまったら
自惚れではない、自分は彼女を愛し、そして彼女もまた自分を愛してくれていると
だけど触れるだけのキスでカチカチに固まり、顔を真っ赤にしてしまうを見て
それ以上の行為は、を怖がらせて自分から遠ざけてしまうのでは、と思ってしまう


「五エ門?」


声を掛けられ、我に返った五エ門は驚く
もう少し先にいると思っていたが、すぐ目の前で自分の顔を覗き込んでいるから
薄暗い中で、自分を見上げる
光る唇、隙間から覗く胸元、花火を映す瞳
頭の中で理性が少しずつ解けていく音がする

「……目を、閉じて欲しいのだが」

「うん?」

首を傾げ、の瞼が下りる
彼女の肩に手を置き、そっと唇を重ね合わせた
ビクッと、彼女の肩が揺れたがそれすら構わないと言うかのように
舌での唇を割った
歯列をなぞり、逃げようとする彼女の舌を、自分の舌と絡める

どれくらいそうしていたか分からない
接吻にやや夢中になっていた五右エ門の胸を、が叩く
ハッとして五エ門は顔を離す
はあはあと肩で息をするの顔は、花火で照らされなくても分かる程、紅潮していた

「……すまぬ」

「うう、ん……」

潤んだ瞳が細められ、微笑むの顔を純粋に美しいと思った
堰き止められていた想いが、溢れ出す

「今から拙者の言う事を聞いて欲しい。嫌なら拒否してくれて」

「……うん」

花火の音が、遠くに聞こえる
肩を抱いたまま五エ門は、言葉を続けた

「拙者は、のことを……愛している。それから……」

「それから……?」

「お主のことを、抱きたいと思っている」

きょとんとした後、すぐにボボッと音がしたかのように、真っ赤になる
俯き、両手を握り締める
五エ門は、どこかでが拒否をする事を予感していた
けれども顔を上げたの表情は、どこか決心をしたようなものだった


「い、いよ……」

「そうか、ダメだと……は?」

「私も……五エ門と、ひとつになりたい」


はにかんで彼を受け入れる言葉を呟くに、ついに五エ門の理性が引き千切れた
抱いていた肩を、そのまま畳へと押し倒す

花火が咲く度に、ふたりの顔を照らす
は、初めて向けられる熱の籠った五エ門の瞳に、胸の音を早くさせていた
自分はこれから、どうなってしまうのか
小さな不安と、五エ門への愛情が渦巻いていた

そっと、五エ門の顔が下りてくる
もそれに合わせて、瞳を覆い隠した
重なる唇、今度はも軽く唇を開き、互いの口内を食べるように貪った
のそのぎこちないながらの動作は、五エ門にとって体を熱くさせるもの以外、なにものでもなかった

五エ門は、の背中に手を回し、固く結ばれた帯の蝶を解く
するりと回し、背を支えながら帯を彼女の体から引き離した
楽になった呼吸と、今にも肌蹴そうな浴衣に、羞恥を覚える
それに気づいていないかのように、五エ門はそっと彼女の浴衣の胸元に手を差し込んだ

「ん……」

前を開き、背中にあるブラジャーのホックを外す
前面を上にずらし、ふるりと震える膨らみを五エ門は両手で形を変えさせた
やわやわと揉み、頂点には掠めるか否かのところで、焦らす

花火の打ち上がる音に紛れて、の微かな喘ぎ声が五エ門の耳に届く

膨らみを揉みながら、首筋にキスを落とす
ややきつく吸い上げれば、白い首筋に赤い花が咲いた
一か所だけでは飽き足らず、彼は次々に花を咲かせていく
そして舌先が胸元を舐め、つつ、と頂点を口内にふくんだ

「ふあっ!」

淫靡な水音が響く。ころころと飴玉を転がすように、乳頭を舐め上げる
片手は腰をなぞり腹部に触れ、恥丘に辿り着く
びくりと、の腰が跳ね上がった
咄嗟に閉じる足を、太ももに手をかけ開かせた

恥丘からゆっくりと指を蕾に這わせる
そこはぷっくりと膨れ上がっていた
潰すように刺激をすれば、首元を曝け出す
ひとつひとつの反応が愛おし過ぎて、耐え切れず首元に噛みつく

「あっ……ご、えもん……」

蕾に触れていた人差し指と、薬指で秘所を広げ狭いそこに中指をゆっくりと挿れる

「んあ……」

「痛いか?」

「う、ううん……なんか、変な感じ」

徐々に指を奥へと挿れる。中指が全て入ると、五エ門はくいっと第二関節を曲げた

「ああ!」

ぐちゅぐちゅと動かせば、後から後から愛液が溢れ出す
次第に指を一本から二本に増やした
バラバラと動かせば、声にならない声がひっきりなしに出る

我慢がきかなくなってきた五エ門は、そっと指を秘所から引き抜く
ゆるゆるとの瞳が開き、火照った頬を携えて五エ門を見つめた

「……いいか?」

「……うん」

五エ門は自分の浴衣の裾を捲り、褌を緩めた
そこには情けない程に反り返った雄がいる
どくどくと脈打つそれを、の秘所に宛がう

「少し……痛むかもしれん」

その言葉には目をきゅっと閉じ、頷いた
なんとか最後の理性を振り絞り、雄を徐々に進めていく
中は狭く熱く、五エ門の脳を蕩けさせる程だった
奥まで辿り着くと、すぐにでも動かしたい衝動を抑え彼女の表情を窺った
眉根を寄せ、口を開き荒い呼吸をしている

「動いても、平気か?」

「ん……うん……」

ゆるりと、律動を始める
花火の音はいつの間にか消えていて、響くのはの嬌声と肉のぶつかる音

「あ、はん! やあ! な、んか……変に、なっちゃう……!」

……! お主は、拙者だけを見ていろ……!」

「う、ん……!」

どちらともか分からないが、ふたりは激しく口づけ、それを合図かのように五エ門がの中に精をぶちまけた



ちゃぷちゃぷと、船に小波がぶつかる音がする
は五エ門に背を預け、水平線を眺めていた


「……五エ門」

「なんだ」

「私、幸せだよ」


ふふ、と小さく笑い、は微睡の中に飛び込む
静かになった夜空を見上げ、五エ門は腕の中のの頬にそっと口づけを落とした





















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