そこにいたのは、女の子に馬乗りされているルパンと
ボロボロになっている他の二人だった


「え……」

の小さい頃はもっと大人しかった気がするぜ……」

「もっともっとー!」


女の子はルパンの短い髪を、ぐん、と引っ張る
涙目の彼は、女の子が落ちないように気遣いながらも、要望通りスピードを上げる


「遊んであげている、と言うよりは……遊ばれてる?」

「そうだ……」


げっそりとした五ェ門が、私を見上げて肯定の言葉を呟いた
このままここにこの子を置いておくと、もしかしたらルパン達が先に参ってしまうかもしれない

そう思ってルパンの背中に乗る女の子を抱き上げる
小さい子を抱くなんて事は、一度もなかったから
思ったよりもあった重量感に驚いた


「今度はお姉ちゃんと遊ぼっか?」

「うん!」


女の子は、嬉しそうに顔を綻ばせる
その表情に、釣られて笑顔になっていく

何がしたい? と聞くとお絵描き! とすぐに返ってきた
自分の部屋に、ノートと色鉛筆があったのを思い出して、一度、彼女を腕の中から解放した

手を繋ぎ、自分の部屋へと連れてくる
女の子は見た事もない機械に興味を惹かれているようで
首をくるくると回して、手を伸ばしたり引っ込めたりしていた


「じゃあ、さっきの部屋でお絵描きしようね」


ノートと色鉛筆を持つと、女の子は喜んで駆けて行った


テーブルに、新しいジュースと皆の分のコーヒー
それから五ェ門の緑茶を置いた

女の子を囲むように、三人が座り
描かれた絵をそれぞれ、眺めている


「へー、なかなか巧いじゃないの」

「将来は画家かなんかか?」

「見込みはあるな」


褒められる度に、頬を染める女の子
和やかな時間が流れる
時計を見れば、女の子がここに訪れてからずいぶんと時間が経っていた
せめてもう少し情報を聞いてみよう、と思った瞬間
玄関の扉がすごい勢いで叩かれる


「すいません! ここに小さな女の子が来ませんでしたか?!」


扉を開ければ、涙を流してそう聞く女の人
黒髪と、どことなく女の子に似た顔つき
一目でこの人が、あの子のお母さんだと判断した


「女の子なら、この中にいますよ。どうぞ」


女の人を支えつつ、中へと招き入れる


「まま!!」


開けたままの扉から、女の子が彼女目掛けて飛んできた
女の人は、女の子が我が子だと分かると、泣きながら力強く抱きしめる

落ち着いた女の人から話を聞くと、どうやら人違いだったらしく
確かに女の子のお父さんは「ごえもん」と言うらしいが
今は仕事で、他の国にいると言う


「どうして勝手に家を出たりしたの?」

「ままが、もうちょっとでぱぱが帰ってくるって言うから、他のお家に探しに来たの」


笑顔でそう言われてしまうと、肩の力を抜くしかなかった


夕陽の中で、私達に手を振る親子
ルパンが先に部屋に戻り、その後に続いて大介が部屋へと歩いていく
残った私と五ェ門だけが、最後まで二人を眺めていた


「DNA鑑定するまでもなかったね」

「親子ではないのだからな」


ホッとしたような表情で、五ェ門が言う
小さく笑うと五ェ門の胸に頭を預けた


「子どもって、可愛いね」

「拙者はもう少し大人しい方が……」

「そう? 元気な方が育て甲斐があるかも」


悪戯っぽく笑えば、五ェ門が困ったように微笑んでくれる


「五ェ門だったら、女の子と男の子、どっちがいい?」

「……どちらでも、拙者は大切にする」

「女の子だったら五ェ門、お嫁さんに行かせられないかもね」


いつか自分の子どもを抱くかもしれない腕で、今は
目の前の一番愛おしい人を抱き締めた