アジトにはその時、偶然にもと五ェ門しかおらず
は自室で睡眠薬の研究を。五ェ門は相変わらず瞑想を繰り返していた

ふと、五ェ門が外を見ると、いつもなら買い物に出かける時間のようで
今だ自室から出てこないが気になり、彼女の部屋のドアをノックする
しかし、普段ならどんなに集中していても、ノックの音だけは聞こえる筈にも関わらず
の返事は、五ェ門の耳に届く事はなかった


「……おかしい」


悪いと思いながらも、五ェ門は許可なく扉を開ける
今朝、チラリと見えた室内の様子と、然程変わりはなく
首を回して様子を窺えば、机に突っ伏しているをすぐに見つけられた
五ェ門は苦笑しつつも、その肩に手をかけて


、そのままでいると風邪を引いてしまう」

「んっ……」


だが、通常の居眠りとは訳が違う事に、五ェ門はすぐ気がついた

触れた肩から感じたのは、布越しからでも分かる程の熱い体温
そして隙間から漏れるように聞こえてきた、荒い息遣い
只事ではないと悟った五ェ門は、慌ててを抱き起こす


「どうかしたのか?

「んあ……っ、触っちゃダ、メ」


不意に顔を上げたの表情は、ひどく五ェ門を狼狽させた
そこにあるの表情は通常、事の最中でしか見られないようなもの


「い、一体どうしたのだ……」

「た、ぶん……睡眠薬、の調合……間違えて……別の、作用が……っ」


分かっていないのは、本人だけ
彼女より多少ともなり経験のある五ェ門は、その症状がどういうものかを把握していて

五ェ門の思考の中で、二つの選択肢が出される

薬の作用が抜けるまで、誰もに近づけないようにするか
それとも、据え膳食わぬは男の恥、と言う事か
悶々とそんな事に思考を巡らせていると、不意に着物の裾を握られる感覚
見れば、やはり妖艶な表情のが彼を見上げている


「一人に、しないでっ……」


その言葉に他意はなかった
少なくとも彼女にとっては、未知の経験な訳で心細いのだろう
しかし、今まさに理性と本能のどちらかを選ばんとしていた五ェ門にとっては
その天秤を片方に大きく振れさせる事となる


……すまん」

「へ? うんっ!?」


まだ熱に浮かされたままのを抱きかかえ、ベッドに落とす
体中が敏感になっている今、それさえも快感にしかならないは目を白黒とさせて
力の入らないうつ伏せになった体。横に向けた顔
その視界に五ェ門の右手が入った

頭すらも重いせいで、は顔を上げて今の様子を知る事ができない
声だけで「五ェ門?」と問いかける。が、彼からの返事はない
その代わりに与えられたのは、急に外気に晒された自分の肌が震える音だった


「ちょ……っ! 急に、何、するの……?!」

「こうするより他に方法はない。抱くぞ、

「それって……っあ!」


体全体に、五ェ門が少しだけかけた負荷が圧し掛かり
部屋着であるTシャツの中に滑り込んできた、彼の手の平
慣れた手つきでブラのホックを外すと、その両手を彼女の胸に宛がう
すでに立ち上がっている胸の頂を、あえて触らないように
やわやわと、の胸の形を変化させていく

薬の作用で、ただでさえ動けない体を上から五ェ門に圧し掛かられ
動きを封じられるように、次々と快感が波になってを襲う
彼女の頭の中には、困惑と羞恥心、そして自分ですら気づけない程の小さな欲情
「もっと、欲しい」と言う感情が渦巻いていた

胸に触れていた手の平は次第に降下し、腹の線、脇腹を通り下腹部へと到達する
五ェ門はジーパンの固いボタンを、いとも容易く外しするりと中へと手を忍び込ませ
普段なら、の顔色を見ながら行うその行為を、薬の効果を和らげる為、と自分で銘打ち
何の前触れもなく、秘所に直接指を触れさせた


「っ!!」


途端、引っ切りなしに聞こえていたの声が途切れる
正確には声にならない声が、彼女の口から発せられた
秘所に触れたばかりの五ェ門の指は、トロトロとした蜜がいつも以上に絡み付いていて
その事に気をよくした彼は、そっとの耳元に唇を寄せる


「……達したのか?」

「っふあ!」


耳に掛かる吐息、そしてなおも動き続けている指
一度達したにも関わらず、体が求めているのは休息ではなく快感
それを信じたくなくて、はフルフルと首を横に動かす


「次はどうされたい?」

「そ、っな事……いえ、ない……っ!」

「ならばこのままだが、はそれでいいのだな?」


止まらない五ェ門の指が、ぐるりとの膣内を抉った
まるでその反動のように、二度目の絶頂を迎えたは思わず顔をあげ喉元を晒す


「……ぃ」

「む?」

「ちょ、だい……っ?」


枕に突っ伏したまま、聞こえてきた言葉はまさに降伏宣言にも似ていて
五ェ門は返事をしないまま、一気に指を引き抜きそのままを貫く


「あっ、やぁ! だ、めぇっ!!」


三度目の頂点を越えても、なお治まらない疼きをは求める
五ェ門は片腕で自分の体を支えると、空いているもう片方の腕での腹を抱きかかえた
無理矢理持ち上げられた体は、ただ快感を欲していて

触れ合っている素肌の部分はいつもより極端に少ないのに、布越しに感じる体温はいつもより高い
何度も何度も、を突き上げては時々耳朶を甘噛みしたり、首筋に舌を這わせたり、と
五ェ門もまた今のを見た事によって、湧き上がってしまった己の欲望を発散させる為に
二人はただ、必死にお互いを食い繋ぎ止める


「ふっ、うっ、……あ、ん! もっ……い、……ご、ぇもっ!」


噴出した汗で滑る五ェ門の腕に、の手の平が絡んだ
弱々しく絡みつくその手の平から、次で最後だと言う事を五ェ門は悟る

五ェ門はの胸の下に腕を持ってくると、そのまま彼女の上半身を自分の胸板にピタリと密着させ
そしてその上半身を、自身の体と共に反らさせる
刹那、が大きく息を吸った


「う、んあああぁぁっ!! ……あっ、ん……っ!!」

「っ!」


堪らず重ねた唇から漏れた声が、途切れた瞬間の意識は遠くへと飛んだ



次にが目を覚ました時、目の前にいたのは土下座をしている五ェ門だった
一瞬、何が起きたのか分からなかっただったが、次第に湧き上がる腰の痛みと
脳裏に蘇ってきた羞恥心を駆り立てられる言葉と行動を思い出し、思わず手元にあった枕を彼に投げつけていた


「っ私が、薬で弱ってる時にするなんて、ひどいよ!」

「いやしかし……ああする他には」

「放っておいてくれればよかったのに!」


自分に都合のいい言い訳しないでよ! と怒鳴るに五ェ門は眉尻を下げるも
あれだけのいい思いができてこれだけの代償なら、と、彼らしかぬ不埒な思いを持っていたようで
それを察したは「一ヵ月間、お触り禁止令」を出したとか





偶発的産物による賜物