「今度作ってくれるペイント弾に、微力の電力が通るようにしてくんねかな?」

「電力?」



それは新たなアジトで、ルパンとが交わしている会話
ルパンが仕入れた図面を見ながら、がふと顔をあげる
目の前で、ちいっとばかしな、とジェスチャーをするルパンに
すぐ了承のサインを出した


「それと、今度の計画にはも潜入してもらうからな」

「了解。今度は何の役?」

「船員さ。んま、また詳しく決まったら報告するぜ」



んじゃあな、と手の平を振りながらルパンは自室へと戻っていく
は図面片手に、ラボへと戻ろうとした





不意に呼び止めたのは、五ェ門で
「なあに?」と言いながら振り返るに、彼は気まずそうに告げた


「今度の潜入で、その……」

「ん?」

「た、たきしーどが必要なのだが……一緒に買いに行ってはくれないか?」

「タキシード? 何に使うの?」

「うむ、何やら船の潜入の際に拙者が着るらしい……」

「そっか。うん、別にいいよ」


じゃあ行こっか、とはルパンのカードの入った財布を持ち、五ェ門に言う
五ェ門はまた、うむ、と言うと愛刀の斬鉄剣を持ち、彼女の後ろについて行く
勿論、ルパンに一言告げるのを忘れずに







街の賑わいに押されつつも、二人は通りの端を歩きながら
目的地であるブティックを探していた

最初は半歩程度間を空けて歩いていたが、が人ごみに押されてしまったので
二人は今、手を繋いで歩いている


「そう言えばね、この前不二子姉さんと話してたんだけど」

「む?」

は恋愛しないの? て聞かれた」

「なにっ!? 、いつからそのような」

「いや、恋愛しないのって? て聞かれただけで、恋人はいないよ」


血相を変えて聞き返してきた五ェ門に、は控えめに言う


「私には、心配性の皆がいるから無理だと思うよって言っておいた」

「そ、そうか……」


安心したように、五ェ門が声のトーンを落として言った
はそんな彼の、焦った横顔を見ながら
「五ェ門が理想だって言った事は隠しておこう」と思う


そう言えば、五ェ門の手って温かいな、とはふと感じた
昔もよく、こうして手を繋いだり、抱き締めてもらったな、と
その当時はまだ、五ェ門がに対して幼さを感じていたからこそ出来ていた話で
当の本人は気づいていないが、成熟したを抱き締めるなど、五ェ門が出来る筈もなかった



「それに、当分はこうしてるだけで満足だし」

「む?」

「五ェ門が私の隣にいてくれるから、恋人とかは当分いらないよ!」



嬉しそうに笑って、手を振り回す
そんな彼女を見て、照れながらもまた笑いを零す五ェ門
はたから見た彼らは、どうやっても恋人同士にしか見えなくて
気づいていないのは、当の本人達だけ



この頃はまだ、お互いに気づいていない
隣にいる、いてくれる存在がどれほど愛しい者かを

それに気づくのはまた、もう少し先の話