Ever afterの主人公です









笑う顔も、泣き顔も、その気持ちも全ては自分の為ではなく別の男の為
それはいつでも隣で見ているだけなのは、自分で
いっその事、全てを捨てて奪えたらどんなに楽か
彼女の笑顔を見る度、そう思ってしまう


「大介、起きてる?」

「おう? 何か用か、

「ちょっと買い物、一緒に行ってもらってもいい?」


五ェ門、今修行中だからさ
そうは申し訳なさそうに次元に言う
「無理だったらルパンに頼むから、大丈夫だよ?」と
返事をしない次元に、は否定を感じてそう言った


「いや、今は暇だからな。構わないぜ」

「本当? じゃあ早速で悪いんだけど、今からお願いするね」

「おう」


言いながらは先にアジトのリビングを出る
隣の部屋にいるルパンに、一声かけ次元に振り返り手招きをして
次元は自分の愛銃を腰にしまい込むと、帽子を深く被り直した



「今日の夕飯はお鍋なんだけど、何かリクエストある?」


市場の食材を吟味しながら、は後ろの次元にそう聞く
その手には、今海から上がったばかりの魚のカゴが握られていて
次元はそっと横に立ち、イカを指差す


「魚介鍋ならイカは欠かせねぇだろ」

「イカかぁ……うん、じゃあおじさん! このイカください」


そう言うの手は、すでに買い物の荷物で塞がっていて
気づいた次元は何も言わずに荷物を持つ


「あ、ありがとう」

「気にすんな」


笑顔で、うん、とは言う

傍から見たら、自分達はどんな関係に見えるのだろう。と
ふと、前を歩くを見て次元は思う
恋人か。はたまた友人か
どちらにせよ、想像でしかないのだ、と半ば自嘲気味に次元は煙草をふかした


彼女との出会いは、雨の日で
アジトに傷だらけで戻ってきた五ェ門の腕に抱かれ、寒さと暴力に今にも死にそうでいた
同じ世界の医者に見せ、回復したら施設に受け渡すつもりが
何を思ってか五ェ門の意向で、彼女を育てることになり
今思えばあの時から、時間は動いていたのだ、と

まだ幼すぎた彼女に、五ェ門は一体何を見出したのか
そして自分もまた、成長していくに惹かれていった

けれども、が選んだのは五ェ門で
それは当たり前とも言える事なのだけれども。それでも次元は腑に落ちなかった
五ェ門には紫がいたし、にもそう言った感情は見受けられなかったのに
だけど、二人は日が進むにつれ、その絆を確かなものにしていく

自分の、目の前で


「なあ、

「んー?」


いつの間にか街は夕陽に包まれる時間で
オレンジ色に照らされたが、次元に振り向く


「お前、五ェ門のどこが好きなんだ?」

「え! 何、どうしたの急に?」

「……いや、何となく気になってな」


言葉を濁した
お前が好きだから。俺もお前に好かれたいから
そう言ってしまわないように

十数歩前にいるは、少し照れた表情で目を反らす
その仕草さえも、次元にとっては酷にしかすぎなくて
立ち止まり、えんえん唸っているに近づいた


「今更だろ? 俺達は散々お前達のバカップルぶりを見せつけられてんだからよ」

「そんなにバカな事してないよ!」


そのしかめっ面さえも、いつからか女の顔で
ああ、自分は本当にイカれてしまったな、と


「……笑わない?」

「ああ」

「……どこじゃなくてね、五ェ門だから好きなんだよ」


へへ、と笑うその顔は、夕陽とは違う朱色に染められていく


「優しいところも、不器用なところも、修行ばっかりしてるところも。五ェ門だから好きだし、許せるの」

「……そう、か」

「他の誰でも代わりにはなれないんだ。だって、その人は五ェ門じゃないから」


敵わない、と。そう次元は悟る
何故ならば彼女のその表情が、声が、感情が
手に取るように分かるのだから

きっと、気持ち云々の問題ではない
もっと奥深く、それこそ運命だなんて信憑性の低いもので、彼女達は繋がっているんじゃないかと

けれど、それでも、自分は
彼女を手中に収めたいと、そう思ってしまっていて


「なあ

「なに?」

「もしも……もしも俺が」


その時、次元の声を遮るように別の音声が響く
音声には反応し、そちらに嬉しそうに振り返った
そこにいたのは、夕陽を背負いゆっくりと歩いてる五ェ門で
は小走りでそちらに近づいてく


「どうしたの? 修行は?」

「今日の修行は終わったでござる。買い物に行ったとルパンから聞いたので、来てみた」

「そっか」


少し遠くから聞こえる声
心の底から嬉しそうに笑う
自分やルパンじゃ見た事のない、五ェ門の笑顔


「ちっ……」


次元は煙草に火をつけ、舌打ちをしてから荷物を抱え直す
そして、達の所へと歩いていく


「おい、お侍様。今日の夕飯の材料だ」

「すまない。普段は拙者の役目なのだが、幾分今日は予定が長引いてしまってな」

「構わねぇよ」

「じゃあ帰ろう?」


がそう言えば、五ェ門が当たり前のように彼女の手を取った
その手を彼女は強く握り返す


「早く! 大介ー!」


気づけばもうずいぶん遠くにいる二人
次元はそんな彼らに気づくと、苦笑い交じりに歩き出した


もしも、俺がお前に好きだと言ったら、お前は何て言う?
笑い飛ばすか? それとも、真面目に悩むか?
けどな、今日のお前らを見てて分かったんだよ
がどんな態度をしたって、結局最後に選ぶのは五ェ門だって事がな


「運命なんてクソ食らえ、だな……」

「なんか言った?」

「いいや」


夕暮れの街の道に、三人の影が揺らめいた










僕の弱さ強みも総てはの為なのに