今朝から降っていた雪は、夜になった今ではもう立派に積もっていた。
ルパンと五ェ門の姿はアジトの中にあったけれど、大介の姿がなくて。
彼らに聞けば、煙草を買いに行ったとか。もしかして、一旦雪が止んだ数十分前にだろうか。
思い返してみれば、彼はアジトを出て行く時に傘を持っていなかった。
窓の外を見れば、今朝より激しく降る雪。


「私、大介迎えに行ってくる」


おーおー、気ーつけてなー、と手を振るルパンを見てから、アジトを後にした。


自分の傘をさし、黒い大きな傘を手に持ち歩き出す。
この雪の中、どうやら出歩いているのは私だけのようで。
防寒はきちんとしてきたけど、外に晒している顔や隙間から入ってくる風はとても冷たい。
窓から漏れる暖かな色をした光が、羨ましくもあった。


「どこにいるんだろう……」


煙草を売っていそうな所を思い出しながら、歩く。
そうしてしばらく歩いていると、誰もいないバス停に、黒い人影。
雪の色と相まって、余計に黒く見えるその人影は、まさしく私が探していた人物だった。


「大介!」


傘を持ち上げて、こちらだと声を出す。
気づいた彼が、手を上げる。


「迎えに来てくれたのか?」

「うん。やっぱり、傘持ってなかったんだね」

「ああ、まさかこんなに降るなんてな」

「寒かったでしょ?」

「まあな」


そう言う彼の首に、マフラーをかける。
大介の格好は、いつものスーツにジャケットを羽織っただけの格好だったので、せめてと思って持って来ていたのだ。
彼の分の傘を渡して、私達は歩き出した。


少し歩くと、大介が不意に立ち止まる。
どうしたの? と聞けば、しくじった時のような表情を浮かべる。


「今日、なんの日か分かるか?」

「えーっと……あ!」


そう、今日はクリスマスだ。
毎年何かしらの展示があったので、盗みに行っていたけれど、今年はめぼしい物がなくて、何もしなかったから忘れていた。


「悪い、プレゼント用意してねぇ」

「ううん、大丈夫。実は……私もだから」


俯くと、ぽんぽんと頭を撫でられた。
顔を上げれば、存外優しく笑っている大介がいた。


「なら、今度一緒に買い物にでも行くか」

「うん」


そっと、頬を撫でられて、その冷たさに驚きつつも、瞼を下ろした。





ホワイトクリスマス





Title by 瑠璃「春夏秋冬の恋20題 冬の恋」