街はオレンジと黒で彩られ、様々な所にはジャックランタンが飾られている。
明るく楽しげで、どこか物々しい雰囲気だ。
も、これにあやかってたくさんのお菓子を購入していた。
アジトのダイニングを飾りつけて、かぼちゃを使った料理を作り、準備は万端だ。
ハロウィン当日、ルパン達は美術館に展示されている絵画を盗みに行っていた。
今回は待機組のは、ハロウィンパーティーの最後の準備をしていた。
テーブルの上にはパンプキンパイ、かぼちゃの細切りを浮かべたコンソメスープ、鶏肉とかぼちゃのソテーが並んでいる。
もちろん、は普段通りの格好ではなく、少し危なげな魔女の姿をしていて。
お菓子を詰めたカゴも準備万端だ。
「みんな早く帰ってこないかな」
時計を見て、呟く。
予定では22時頃には帰宅の筈だった。しかし、針はすでにそれを通り越している。
何もする事のなくなってしまったは、あくびを噛みしめた。
次第に、こくこくと船を漕ぎ始める。瞼はくっつき、ソファに沈み込む。
自分の体を己の手で抱き締めて、は夢の世界へと旅立った。
オレンジ色の世界で、黒い影のようなものに追いかけられる。
いくら走っても世界はオレンジ色のままで、誰一人いない。
その影は何かもやもやとしたもので、輪郭がはっきりしない事が余計に恐怖を煽る。
突然、何十メートルも先に大きな木製の扉が表れた。
は必死にその扉に飛びついた。
鍵はかかっておらず、間一髪で中に滑り込む事ができた。
中は薄暗く、淡い橙色のジャックランタンが無数に浮いている。
長机にはご馳走が並び、そこにはルパン達が席に着いていた。
「ルパン! 大介に五ェ門も!」
「遅ぇぜ〜、待ちくたびれちまったよう」
「早くこっちに来いよ」
「食事が冷めてしまうぞ」
慌てて席に着く。それぞれが手を合わせてからご馳走にかぶりつく。
も手を伸ばそうとするが、刹那はたと止まる。
今年のハロウィンパーティーは、みんなも仮装をする予定だった筈。
しかし、目の前のルパン達は普段と同じ格好だ。
「……私、行かなきゃ」
「行くって、どこに?」
「私の居場所は、ここじゃない」
立ち上がり、扉を目指す。
ルパン達は面白そうにを見ていた。
「けけっ、悪戯にひっかからないでやんの」
「来年は絶対にひっかけてやっかんな」
ルパン達がポンと音を立てて、ジャックランタンになる。
はためらう事なく、扉を開いた。
はっと体を起こすと、そこは変わりないアジト。
時計を見れば、あと30分でハロウィンが終わってしまう。
ちょっと過ぎたくらい、まあいいか。そう思いながら、冷めてしまった料理を温めようと立ち上がった。
すると、玄関から扉を叩く音が聞こえてくる。
その叩き方は、それがルパン達であると分かるように、リズムを刻む。
料理をテーブルに戻し、玄関へと走る。
「みんな! おかえり!」
「おう、ただいま〜」
ドラキュラの格好をしたルパンが、を抱き締める。
後ろでは、獣耳をつけただけの次元と、鎧武者の五ェ門がいた。
「いやあとっつぁん撒くのに時間かかっちまってなぁ」
「大丈夫だった?」
「もちのろんよ!」
「料理温め直すから、食べよう」
魔女に続いて、ドラキュラ、狼、武者が続く。
「あ、そうだ。トリックオアトリート!」
の弾んだ声が、アジトに響いた。
秘密の合図で扉を叩けば
Title by Fortune Fate「ハロウィン幻想5題」