カーテンの隙間から漏れている朝日に、目を細める事から私の朝が始まる
昨夜星を眺めたから、薄いカーテン一枚で区切ってある窓が薄っすらと見えた
真っ白なベッドにふたり、私とバージルが並んでいて
大きな身体を折り曲げてバージルは私の隣で、無防備に普段の冷酷な彼からは見取れない程、覇気のない顔でまだ夢の中にいる

いつもはオールバックで少しだけ逆立ててある髪は、彼が嫌いなダンテと同じように下りていて
弟であるダンテのことを、本当はそんなに嫌っていない、というより意外と大事に思っている事を知っているけれど
それを話すと眉間の皺がますます深くなるから、その話題はあまり話さない

私と二人で買い物に行った時、お揃いで買った私のより二回りくらい大きな枕に
その綺麗な顔を埋めて、寝息を立てる様子からは
彼が悪魔と人間のハーフだという事は分からないな、と思う

ふと、自分の右手に目をやれば、繋がれているのは彼の左手
長くて筋の通っているバージルの指先が、私の手の平を包み込むように隠している

どちらかと言うと血液があまり足りていない私の肌は白く
そして同じようにバージルの肌も白い
似ているふたつの、大きさが異なる手の平が重なり合う事を嬉しく思う

きっとそれは、握ってくれるのがバージルだからで

空いているもう片方の手の平で、彼の銀糸に触れてみる
さらりと零れては、揺れる髪
たくさんの血を浴びて硬そうなイメージのそれは、案外にも柔らかく気持ちいい
いつだったか同じような感想を、バージルも私の髪をいじりながら言ってくれたような気がする

繋いだ手の平は心なしか冷たくて、覚めたばかりで火照った身体を持て余す私にとっては
そこから広がる冷たさが心地いい

時計を見れば、そろそろ起きて動かなくてはいけない時間だった
いくら休日と言えどもダラダラし過ぎはよくない
そう言ったのは、自分にも他人にも厳しいバージルで
私は名残惜しげにゆっくりと、温くなったシーツから抜け出そうとした


「ん……」


ピクリと握ったままのバージルの手の平に、僅かに力が篭った
振り返れば眉間に皺を寄せて、身じろいでいるバージル


「……?」


寝惚け眼のままで起き上がった私を見上げるバージルは、幾分普段より幼く見えた


「ごめん、起こしちゃった? もう少し寝てていいよ。私その間に朝ごはん作るから」

「……いや」


そう言うとバージルは握ったままだった手を軽く引っ張った
つられて私も彼の方に傾く

上半身はそのままの彼の胸の中
私よりも若干低い体温のバージルのそこは、シーツの中より温くて
握ったままの手の平を、器用に回転させて私を抱き締める


「ば、バージル?」

「……もう少しこのままでいるか」


どうしたの? なんて恥ずかしくて聞けなかった
でも恥ずかしいけれど、嬉しくて
好きっていう気持ちが溢れそうな喜びを噛み締めながら、そっと笑った

バージルの肩越しから降り注ぐ、真昼の太陽の陽射を浴びて
私達はそっとおはようのキスをした