隣に座るハニガンの顔が、歪んだ
焦った声で、向こう側のレオンと話をしている
何か、まずい事でにもなったのだろうか

彼女の肩を軽く叩く。振り返るハニガン。その顔はハッと我に返ったような表情だ

「ちょっとだけ、いい?」

普段の調子で、片手を顔の前で倒して
ふう、と息を吐いた彼女が、ヘッドセットを渡してくれる
ハニガンが立ち上がり、空いた席に座る


『あー、ハニガン?』

「レオン」

『なっ、か?』

「うん」


画面に映るのは、少し汚れて疲れていそうなレオンの顔
話は大体聞いている。今、とても大変だって事


「大丈夫?」

『今はなんとか……これから、厳しい状況になる』

「そっか……」

『不安にさせて、ごめんな』


指先でレオンの画面越しの頬に触れる
機械特有の熱が、そこにはあるだけで、実際の彼に触れられる訳じゃない
そうだと分かっていて、そうした

レオンが、私の指先に触れた
眼差しは強く光を持っている。いつもの、レオンだ


「不安なんかないよ」

『そうなのか?』

「うん。レオンとヘレナが、無事に帰ってくるって信じてる」

『……ありがとう』

「帰ってきたら、たくさん抱き締めて?」

『もちろんだ、俺のお姫様』


頬が少し熱くなる。優しい笑みを湛えたレオンがそこにはいる


「ハニガン、ありがとう。もう代わるね」


ハニガンにヘッドセットと席を返す
自分の席に着いて、デスクの上の写真立をちらりと見る
そこには休暇の時に撮った、レオンとのツーショットが飾ってあって
他愛のない日、彼の部屋で撮ったなんて事ない写真
それでも、そこにはたくさんの愛情が詰まっている

写真立に触れる。指先がカタカタと小さく震えた
その指を口元に持っていき、口を引っ張って笑顔になる

大丈夫、私は彼らをちゃんと、笑顔で出迎えるんだ





私はそんなに弱くないから





title by 強がってばかりの私5題 (確かに恋だった)