親愛なるクレアへ

元気ですか? 私はいつもと変わりません。
実はお知らせしたい事があって、メールしました。

ジェイクにもついに恋人……家族ができたの!
っていって、とってもいい人なんだって。
今度会う事にもなってて、今からすごく楽しみ!
ジェイクったらもうデレデレで、のろけ話を聞かされちゃうの。
もちろんちゃんと聞いてあげてるけど、本当に人って変わるのね。
いつかクレアやレオン、クリス達にも会わせたいって。
もしかしたら、もしかするのかしら……?

次はいつ会える? その時に、色々聞いてほしい事があるの。
返事、待ってます。

愛を込めて、シェリー



***




某国、とある街のアパートメントの一室
ダブルベッドにひとりで眠る男の背後に、忍び寄る影


「ジェーイク、もう起きる時間だよ」

「んあ……ぁあ」

「また二度寝したでしょ!」


起きてよ、と体を揺するが効果はあまりないようで
揺すられるのが嫌になったのか、ジェイクはを抱え込む


「なにするの」

「……別に」

「もう起きなきゃ」


寝惚け眼の瞳を見て、は笑う
それから軽いリップ音がした
ぱちぱちと、瞬きを数回


「目、覚めた?」

「……まだ」

「もう!」


は、ジェイクの額、鼻先、頬に唇を落としていく
そして真正面から顔を見つめて、笑う
幸せが溢れてしまうかのような笑みで

ジェイクは目を開けて、その笑みを噛みしめるように眺める
そして軽く唇を触れ合わせて、を抱きかかえたまま起き上がった


「ねえジェイク」

「なんだよ」

「来年の今日も、こうしていられるかな」


決してその顔は悲哀に満ちてなんていなくて
きっとそうなるであろう事を予想している顔だった
ジェイクは腕に力を込めて、それを返事の代わりにした


「そのうち、もうひとり家族が増えるのかなぁ」

「なっ」

「ジェイク、男の子と女の子、どっちがいい?」

「まっだ、気が早えんだよ!」


抱えていた腕を離して、彼は立ち上がる
がりがりと坊主頭を掻き、バスルームへと向かう
は朝食を仕上げるために、キッチンへと

ふいに、ジェイクが足を止めての背中を見る
それから小さな声で呟いた


「俺は、どっちでも……となら……」

「ん? なにか言った?」

「なんも!」


頬が赤くなっている事は、あえて指摘しなかった
堪え切れないほほえみを零しながら、は朝食を作り上げる
その左手薬指には、ジェイクとお揃いのプラチナリングが嵌っている

ふたり分の食事に、ふたり分の食器
彼の好きなものと、彼女の好きなもの
ありふれた毎日の光景だけれども、彼らにとっては宝石よりも価値のあるもので
何にも代えがたい、宝物





















幸せなふたりの日々は、どこまでも続いていく