部屋の飾りつけも、ささやかながらした。
今日のディナーは特別仕様だ。
は、ジェイクの帰宅を今か今かと待ちわびた。

夜空は真っ黒なカーテンに、所々穴を開けたように星が散らばっている。
そこから、シンシンと雪が降り続いている。

バイクのエンジン音が聞こえて、鍋をかき混ぜる手を止めて玄関へと向かう。
扉が開き、ジャケットを着こんだジェイクが顔を覗かせる。


「おかえりジェイク」

「おう」

「寒かったでしょ? ご飯できてるから」


頷くジェイクの背中を押して、二人はリビングに向かう。
部屋の中の変化に気づいたジェイクは、口笛を吹く。


「一人でやったのか?」

「もちろん。驚いた?」

「ああ」


スープをよそって、オーブンの中にあったチキンを取り出す。
テーブルの上にはオードブルやバケットが並んでいる。
ジャケットを壁にかけて、ジェイクは席に着く。

少し背伸びをして買ったシャンパンを開けて、細長いグラスに注ぐ。
ステムを握って、カチリと乾杯を交わした。


「メリークリスマス、ジェイク」

「メリークリスマス」


スープを飲み、チキンを食べ、話に花を咲かせる。
シャンパンのせいか、の頬は上気していて。
だから、ジェイクの様子が少しぎこちない事に気がつかない。


「な、なあ」

「うん?」

「俺達って、一緒にいるようになって結構経つよな」

「そうだね」


ジェイクは、残っていたシャンパンを一気に呷り、じっとの瞳を見つめた。
もそんなジェイクの態度に、背筋をのばす。


「これ、受け取って欲しい」

椅子から立ち上がり、の前にジェイクが跪く。
差し出された群青色の小箱に、は目を見開いた。
ジェイクが箱を開け、中の物がよく見えるようにする。
そこには、ダイヤモンドが鎮座する指輪があった。


「ジェイク……」

「受け取ってくれるか?」

「……私で、本当にいいいの?」

「俺はがいいんだ」


彼女の左手を取り、薬指にそれをはめる。
光を受けて輝くそれを眺め、それから大事に右手で包み込むと、の瞳から涙が流れ落ちた。


「結婚しよう」

「うん……!」


抱き合うふたりを、降りしきる雪が見つめていた。










一番群青天鵞絨の小箱で光る










Title by Fortune Fate「ふたりの聖夜に5題」