突き抜けるような青空、雲一つないそこは変わらず広がっていた
いくつも墓石が並ぶここで、真新しいそれはあった

刻まれた名前は、何度も目にした見慣れたものなのに
どうしても彼が、そこで眠っているなんて思いたくなかった
実際彼の体はここにはなく、海の底に葬られたのだけど


「……ピアーズ」


逞しい背中が、揺れる

そっと手を伸ばして、触れる直前で手を止めた
手の平を握って、胸の前に留める


「……隊長」

「今でも、これでよかったのか、って思うんだ」


隊長の横顔が見える位置に立つ
今にも泣きそうな、それでもどこか強さを秘めているその顔
いつだって私達は隊長を追っていた

ねえ、ピアーズ先輩。あなたなら、こんな時、どんな言葉を掛けた?


「先輩は……」

「ん?」

「きっと、笑ってると思います。隊長のこと、本当に尊敬してたから」


私がもしピアーズ先輩と同じ状況になったら、きっと同じ事をしていただろう
ああ、でも。こんな顔をさせてしまうと分かっていたら、どうしただろうか
笑おうとして、でもどうしても泣きそうな、それを必死に堪えている顔


「……私も、きっと、同じ事をしてました」

「……強いな。ピアーズも、も」


悲しい顔なんてして欲しくないのに
笑っていて欲しいのに
でも、そんな魔法の言葉を、私は知らない





弱い私ならしてくれた?





title by 強がってばかりの私5題 (確かに恋だった)