思えば昔からひと肌が好きだった
いつだって親の腕の中で眠り、朝は頬をくすぐられて起きていた
男女問わず、挨拶には大袈裟なくらい抱き着いて
感情はいつもボディランゲージで表している

「おはようジル」

デスクに向かう同僚の背中に抱き着く
彼女は私の腕に手を絡ませて、肩ごしに見上げて「おはよう」と返してくれた

救急キットの補充をするレベッカにも抱きつき、朝の挨拶をする
彼女の隣にある自分のデスクに着くと、銃の手入れをするバリーが目に入った
その後ろのデスクはまだ無人だ
荷物を手早く片付けて、廊下へと踊り出る

廊下の隅で、クリスと話し込む隊長を見つけた
駆け足で近寄って、その逞しい腰回りに腕を回す
抱きついた衝撃すらものともせずに、彼は私を見下ろす

「……今日も相変わらずだな、

「おはようございます隊長。クリスもおはよう」

「俺はついでかよ」

不貞腐れたような表情のクリスに、笑いかける
そっと外された腕。隊長を見れば、その瞳はいつもと変わらず黒に覆われていて

「始業の時間だ。ふたりとも、行くぞ」

「了解」

「はーい」

「それから、コミュニケーションを取るのは構わないが、もう少し方法を考えるんだな」

「方法?」

首を傾げれば、隊長が小さく溜息を吐いた
隣のクリスは何か面白い物を見つけたような表情だ
状況を分かっていないのは私だけのようで、なんだか納得がいかない

「別に私は構わないが」

「俺も別に」

「ふたりして一体なんの話?」

「……行くぞ」

結局なんの事か教えてもらえないまま、隊長はオフィスへと歩き出す
その後を慌てて追いかける私とクリス

「ねえクリス、隊長は何が言いたかったの?」

「お前、本当に分かんないのか?」

「うん?」

隊長も苦労してんだな、と苦笑いを零すクリスに、やはり私は首を傾げるだけだった



仕事中も、私は大抵隊長を見ている
気がつくと、目で追っているのだ
元々触れ合うのが好きな私は、それに合わせてしなやかな筋肉も好きだった
所謂、フェチというやつだろう

STARSに所属する男性陣はみんな鍛えられた肉体を持っている
その中でも特に、隊長の身体は私好みだった
制服越しにも分かる隆々とした筋肉は、暑苦しさを感じさせる事のない鍛えられ方をしていて
初めて会った時から、惹かれていた

そのせいか、男性陣の中でも隊長にだけよく触れていた
気軽さでは女性に勝てないけれど、触れる度に何か胸の奥が温かくなるのを感じる
そんな私を彼も他の隊員も咎める事をしないでいてくれる
それに甘えている私も私だけれど


静寂がオフィスを包む時、そこには私と隊長のふたりだけがいた
すっかり忘れていた期限間近の書類を、黙々とこなす
隊長は私の書類ができあがるのを、わざわざ待っていてくれている
頭の中は大慌てだけれど、手はなかなか思うように進んでくれない
ちらりと隊長の方を窺う。別の書類束に目を落としている彼の顔が視界に入った
早くしなくちゃ、そんな事を思いながら筆を進める

やっとの思いで書類を仕上げ、隊長のデスクに持っていく
差し出せば、大きな手がそれを受け取る
ふいに指先が触れて、肋骨の下にある臓器が音をたてた
ああ、そう言えば今日、普段よりも彼に触れていない
私の仕上げた書類に目を通し「思ったより早かったな」と呟くと、隊長は帰り支度を始める

机上にある彼の左手に、そっと自分の右手を重ねた
動きが止まり、サングラス越しの瞳が私を見上げる

「隊長の手って、大きいですね」

安心します。と笑えば、包んでいる手が強張った
それからすぐに手が離れ、怒ってしまったのだろうかと不安になる
けれども隊長は何も言わずに立ち上がり、デスクの向こう側にいた私の隣に立つ
正面に体を携えれば、自然と首が上を向く

「……お前は性質が悪い」

「え?」

そう言われたと思うと、大きな掌が私の顎に添えられて
何の前触れもなく、端整な顔が近づいて気がつけば口づけを交わしていた

体中に熱が回り、縛られているかのように動きが取れなくなる
私が抵抗せずにいると、唇を這うように舌が動く
隙間に舌が差し込まれ唇を割られて
逃げようともがく舌に、絡まる彼の舌が熱い

酸素が足りないのか、頭の芯が痺れてくる
立っていられなくて崩れると思った瞬間、もう片方の腕で腰を抱かれた
角度を変えて続けられる行為が、不思議と嫌じゃなかった
それ以上に、心のどこかでこの先を望んでいる自分がいる

唇同士が離れ、彼の唇は私の首筋を伝っていく
右耳の下をきつく吸われて、顎を持ち上げていた手はいつの間にか直に背中をなぞっていた

ぱちん、とブラのホックが外れる音がした
一瞬肩が揺れるが、それさえ気にしていないかのようで
隊長は私を自分のデスクにゆっくりと横たえると、絶対的支配を匂わせる目で私を見下ろした

「拒まないのか?」

「……嫌じゃ、ないんです」

沈黙。そしてそっと外されたサングラスは、私の横に置かれる
ひとつひとつの動作に心臓が高鳴るのを感じた

下りてくる顔に合わせて、瞼を下す
腕を隊長の首に回す。ホックの外れたブラジャーが動きに合わせてずれるのも構わないで

今度は自分からも絡めるように舌を動かす
些か乱暴だとも思えるくらいの強さで胸を揉まれ、頂を摘ままれる
唇の隙間から声が漏れて、腰が揺らめく

「誘っているのか?」

「んあっ……そんな、ことっ……!」

「私にはそうとしか見えないがな……」

パンツのボタンを外され、解放感を味わう下半身
既にそこが潤っているのを、恥ずかしいくらい分かっていた
まるで誘導でもされているかのように、隊長の掌は閉ざされているそこに触れる
布越しに弱い所をなぞられ、上擦った声が漏れる
聞かれたくなくて、隊長の肩に唇を押し当てた
それを良しと捉えたのか、クロッチの脇から太い指が差し込まれる
直に触れられ、ぬめりとした液体が彼の指を汚す
恥ずかしさで目も当てられない。声を漏らさまいと必死で

けれども隊長の前で、それらの行為は無駄に等しいものらしく
何か楽しそうに私の体を蹂躙していく
腰をなぞり、臍を舐め上げられ乳首をきつく吸われる
わざと音をたてて乳房を舐められ、膣内を太い指が何本も駆使して掻き混ぜられ
それら全てが同時に体中で起こっている訳で
そうなれば、必然と意識が遠のくのはしょうがない事だと思うの


「あ、ああ、あっん、も、ダメ……っ! イッチャウぅ……」

「これだけでか? もっと楽しませてはくれないのか」

「やあ、もう……隊長のが、欲しいです!」

「普段どれだけ私が我慢を強いられていたか分かるか?」

「我慢ん?」

「お前が、が触れる箇所は熱を持ち燻る。荒ぶる雄を鎮めるには情けない方法しかない……」

流暢に話す間も、彼は私の体をまさぐり続けている
限界が近くて、口元からはサラサラとした唾液が流れてしまう

腕を伸ばして、膨張している下半身のそれに手を這わす
びくりと隊長の腰が動いて、私は少し優勢に立てたつもりになれた

「これが、今すぐ、欲しいんですっ!」

組み敷かれたままの体制で、力のない目で睨みつけながら強請る
隊長は不適に笑うと、腰を屈める
かちゃかちゃと金属同士の音がする。ジッパーの下がる音も聞こえた

「そこまで言ったのはお前だから。私は責任を持たん」

「ん、は……はやくう……!」

両肩を押さえつけられ、それから一気に圧迫感が襲ってきた
私の狭い穴にそれは入らないだろうというくらい膨張している、隊長のそれ
それはがつがつと遠慮なく、私の奥深くを目指していく
肉が擦れる度に快楽が生まれ、ひっきりなしに声があがる
苦しくて、甘くて、苦しくて、身震いする程の快楽が襲ってくる
出し入れをされる度に溢れる混合液は、デスクに跳ねる
聞こえる音と彼の声、私の嬌声は滲んでしまっている

吸い取ろうと、絞り上げようとする私のハシタナイ下の口
上の口で私はあろう事か、隊長への愛の言葉を囁いている


「あああ! あ! あの、ね! たいちょ、のこと! うぅん! 好き、みたいなんでぅ、ああ!」

「上も下も……お前はすごいな」

「たい、ちょ!」

「……アルバートだ」

「ある! ああん、もう、本当に……いくっ」

「出すぞっ」

「う、ん……中に、全部、出して……? ちょーらい?」

もう自分でも何を言っているのか分からないほど、行為に酔い浸っていた
弾ける汗、荒い息遣い、体内の奥へ奥へと排出される白濁の液
全てを出し終えた彼は、私の上に覆い被さる


「……隊長?」

「……どうした」

「腰が、痛くて、動けません」


隊長が黙る。私はまた何かをしてしまったのだろうか


「それならまだ大丈夫だという事だな」

「へ、え、ちょ、っと、待ってくださいよ、隊長?!」


反転させられて、お尻を隊長に向けて突き出している格好
これは噂に聞く……

「いい眺めだな」

軽く尻を叩かれると、電流のような物が背筋を走った

「はう……?!」

「ほう、お前はそちらもいけるのか」

嬉しそうな隊長が、私の頬に口づけた

「これから女性と私以外の人間に、むやみやたらコミュニケーションを取らない事だな」

「取らないと……どうなるんですかぁ」

「それは私だけが知っている」

そう言って額に口づけられたそれが、存外優しいもので
なんだか幸せな気持ちに浸ってしまって
これでいいのか、という思いと共に急にきた睡魔に身を任せてしまう
彼の逞しい腕の中で、夢現な私がいた


(やっと、手に入れられた……)


彼女を抱きかかえたまま、ウェスカーはひとり微笑む











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