時々、夢を見る
何も知らなかった、幸せだったあの頃の夢を

頼もしくて信頼できる仲間に囲まれて、大変ながらもやりがいのある仕事をこなす毎日
七色に輝いているとさえ思えた日々だった
でもその日々も、あの事件によって消えてしまった

失くしたものは多過ぎて、手元に残っていたのは自分の命くらいなもので
その中でも、最も私を悲しませたのが「彼」を失う事だった
「彼」を失った私の毎日は、まるで鉛のようで
無味な毎日を送っていた

けれども、そんな日々にも終止符が訪れた
漆黒を纏って「彼」―アルバート―は、私のもとに帰ってきてくれた
そして私を、鉛の日々から救い出してくれたのだ


クローゼットの中を整理していると、古ぼけた段ボール箱を見つけた
中にはアルバムや写真が詰まっている
何枚か取り出して眺めていると、ラクーンでの写真が出てきた

そこには私を真ん中に囲んで、クリスやジル、他の仲間たちが映っている
写真を見た事によって、過去の記憶が鮮やかに蘇ってくる
じわり、目頭が熱くなるのを感じた


「何をしている?」


背後から声を掛けられ、肩が揺れた
振り返れば漆黒の彼が立っている


「クローゼットの整理をしてて……」

「……泣いているのか?」


アルは私の手からそれを取ると、暫し眺めた
それから座り込んでいる私を見下ろすと、不意にその瞳が光ったような気がした


「まだ未練があるのか?」

「え……」

「お前にはこの俺がいるというのに、昔の方がいいと言うのか」


腕を強く引っ張られ、サイドにあったベッドに投げられる
目を白黒させている間に、彼が私の上に圧し掛かる
突然の事に、私は抵抗する事も忘れていた


「あ、る……?」

「分からないようなら、体から覚えさせるまでだ」


片手で私の両手を上に抑えつける
頬を掴まれ、降ってきたのは噛みつくようなキス
唇を無理矢理割られて、歯列をなぞられる
咄嗟の事で逃げようとする舌は、彼の少し長いそれに絡め取られて
飲み下せない唾液が、首を伝っていく感覚に、背筋が伸びる
唾液の交じり合う音が、耳を襲う

酸欠で、くらくらとする頭に、小さな電流が走る
いつの間にかたくし上げられたトップスとブラ
普段の行為よりも強めに揉まれた乳房が、電流の原因だと分かった


「やあ……!」


唐突な行為に、やっと弱々しい抵抗の声をあげるも
隙間を縫うように塞がれた唇は、すぐに声をあげられなくなる

与えられた刺激で、胸の頂が勃っていく
彼はそれを見逃さないと言わんばかりに、手袋をしたままの指先で弾いた

「……っあん!」

離された口から出たのは恥ずかしい程の声
アルの手は休む事なく、乳房を強く揉みしだき、時折焦らすように頂に触れず、円を描くようになぞるだけ
その指に反応するようにそこは、自分でも分かるくらい勃ち、刺激を求めようとする
それが恥ずかしくて、彼に見られないよう顔を横に向けた

「俺を見ろ」

脇腹を撫でていた手が、再び私の頬を掴んで彼へと向けさせる
アルの瞳には赤い光。そこにはどこか怒りにも似た感情が、浮かんでいるように思えた
生理的に伝う涙を、舌で舐め取られる

「お前は、俺だけを見ていればいい」

刹那、彼の頭頂部が見えて、焦らされ続けた胸の頂が、ねっとりとした舌の感触を覚えた
喉が反り、声が漏れ続ける
転がされ、軽く噛みつかれて、引っ張られて
代わる代わるの動きに、翻弄される
下半身は、恥ずかしい程に疼き、彼を求めているのが嫌でも分かった

先刻まで、過去に思いを馳せて哀愁すらあったのに
今はこんなにも、彼だけを求めてしまう

胸の頂から口が離れ、その舌は徐々に降下していく
胸元、腹筋、臍、その度に腰が揺れる

パンツのボタンを外され、いとも容易く脱がされる
ショーツだけになった下半身は、外気に触れて震えた
アルは一度体を上げると、口で手袋を外す
そしてそのまま、私のショーツの中に手を入れた

入口をなぞるように、触れられて
はしたない程の水音がした


「俺に好きなようにされて、期待していたのか?」


呆れたように、それでもどこか優越感に浸っているようにも感じられるような声色で、耳元で囁かれる
その間も、膨れ上がった突起に柔く指先を擦りつけられる
強い電撃が脳みそをかき混ぜる

「あっ……あ、だ、め……! そこ、は……!」

「なにがダメなんだ。こんなにしておいて」

擦った勢いで、そのまま中に指が侵入してくる
ぐりぐりと肉壁を抉り、私の最も感じる場所を探し当てようとする
指の腹がそこに触れると、私の声は一層高くなった

「は、あん!!」

一本だった指は、二本に増えバラバラに動く
一本は確実に弱い所を攻めて、もう一本は中を混ぜるように蠢いている
引っ切り無しに攻め続けられていた私の体は、じきに絶頂を迎えようとしていた

けれども、急に指は引き抜かれ、その感覚に声が出る
縋るように彼の顔を見れば、サングラスを外し射抜くように私を見下ろしていた


「誓え。、お前にとって俺だけが全てだと」

「……アル」

「そうでなければ……ここでお終いだ」


お終いなのは、行為の事なのか、それとも私たちの関係なのか
どちらにせよ、私の答えは決まっている


「私には、アルだけ……あなただけしか、いらない……」


絶え絶えの息のまま、言葉を発する
満足そうに小さく彼は笑い、そしてベルトに手をかけた
金属音がして、蜜壺の入口に宛がわれる膨張した熱

右足を彼の肩にかけられて、一気に奥まで押し込まれる


「ああ!!」

「っく……」


指とは比較にならない質量が、抉じ開けるように中へと進んでくる
最初からトップスピードで、奥を突かれる
肩を両手で押さえつけられて、それでも体全体が揺れる
彼自身が私の膣壁を擦る度、声が止めどなく漏れていく


「っふ、あ、ぁん! あ、る……! も、だめ、いき、そう……!」

「まだだ……っ」


お互い、もう余裕なんてなかった
彼はきっと、ただ欲望のまま腰を振っている
それでも確実に私に快感を与えていて

中で暴れていたそれが、一度大きくなる
次の瞬間にはそれは脈打ち、中に精が吐き出される
それを受け止めた瞬間、私は背中を弓なりに反らし絶頂を迎えた



両腕を折り曲げて、私の頭の横に立て変わらず見下ろす彼の息は荒い
気怠さを感じながらも、その頬に指を這わせて問う

「……急に、どうしたの?」

「別に、どうした事もない」

「写真見てから……もしかして、嫉妬、してくれた?」

その言葉を聞くなり、彼は体を起こし私に背を向ける
乱れた服を整え、立ち上がった

「シャワーを浴びてくる」

「ん……」

肯定も否定もしないという事は、恐らく前者なのだろう、と勝手に推測する


ああ、どうして私はこんなにも現金な女なのだろう
過去に未練がないと言えば、嘘になるのに
それに嫉妬した彼の行為が、嬉しいだなんて



















シーツを纏って、彼の後を私は追った



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