昔から、自分は人付き合いが下手だった

実の親でさえ困り顔をするくらいで
学校ではいつだってひとり
親友どころか友達と呼べる人さえいなくて
恋人なんて、もっての外だ


それなのに、この職場の人達はどうにもいかない

先輩であるジルは、こんな無愛想な私を可愛いと言い、休日になると色んな所に連れ出してくれる
クリスやバリーはよく飲みに連れて行ってくれるし
同期のレベッカなんて、たくさんの話を私だけにしてくれる

今までされた事のない対応に、毎日戸惑ってばかりだ
自分でも驚く程、彼らには何も返せていない



、今日の終業後は空いているか?」


上司である、ウェスカーにそう声を掛けられたのは昼休みだった

唐突な申し出に、一瞬固まるが
「はい」とだけ返す

そうしてやって来たその時間
オフィスに私と彼のふたりきり


普段、彼を見ていても、そうそう話すタイプじゃないのは分かっている
資料を読んでいるウェスカーは、実際に今だ何も話さない
特に用事がある訳じゃないから、時間は大丈夫なのだけれど
一体、何の為に残されたのだろう
首を傾げた時だった


「仕事はどうだ?」

「遣り甲斐があります」

「そうか……人間関係は?」


そう来たか、心の中ではそう思ったけれど
頭はピシリと固まってしまう

言葉が続かなくて、ただじっと、ウェスカーの青い瞳を見ていた


「私から見ると、大分無理をしているように見えるのだが」

「そう、ですか……」

「ここの人間は、お前がぶつかってきても受け止めてくれる者ばかりだ。安心しろ」


彼の言葉に、ぽろりと、目から何かが落ちていく
ああ、そうか、私は










ひとりで生きたいわけじゃない










title by 強がってばかりの私5題 (確かに恋だった)